十八話・そうだ、と思っても大抵行けない


 大宮駅は早朝にも関わらず多くの人が行き交っている。
 背広姿や学生服の人々が、上り方面へ向かう急行電車へ乗り込み、通勤ラッシュの一端を担っていく。
 その中、異彩を放っている人物がいる。
 服装こそ他と遜色ない深緑色のスーツだが、周囲に比べて頭一つ分以上低い身長差と、背負っている長杖が異質さを際立たせる要因となっている。
 ネギだ。
 今朝は長杖ともう一つ、リュックサックを背負っているが、足取りは軽い。

「おはようございます、Mr.スプリングフィールド」

 そう挨拶したのは、黒のスーツとネクタイに白のシャツというツートンカラーでまとめた奈留島だ。
 奈留島は挨拶もそこそこにすると、手に持った冊子に目を落とした。
 片手で開かれている冊子は20ページ程の厚みで、コピー用紙を束ねたそれは端をホッチキスで留めてある。
 表紙には、筆で書いたような荒々しい書体で“見よ、あれが京都の灯だ”という見出しで、背中に炎を背負った、しかし陰湿そうな顔つきの男が描かれている。

 ……確か、実行委員が考えたマスコットキャラの“祇園仮面”でしたっけ?

 10円玉にも刻まれている平等院鳳凰堂をモチーフにしたキャラで、友達を作るために悪と闘うヒーローという設定だったはずだ。
 しかし興奮すると発火するという特異体質が原因で友達はできず、今のところ友達は球体関節人形の鈴原くんだけだとか。

 ……日本ではそういうヒーローが流行っているんでしょうか?

 などと日本の文化を考察していると、改札の方からしずな先生の声が飛んできた。

「それでは京都行きの皆さん、各クラスの班ごとに点呼をとり、ホームに向かってください」

「あ、はい。――では1班から6班までの班長さん、お願いしまーす!」

 集まる生徒達は良く言えば賑やか、悪く言えば騒がしくはあるが、動きに統率はとれている。
 改札を通過し、東京方面行きのホームに上がれば、既に新幹線が乗車口を開放して待機していた。

『JR新幹線、あさま506号、――まもなく発射致します』

 アナウンスに後押しされるように、生徒達が所定の座席へと向かって行く。
 座席は基本的に班単位で分かれているが、発車した後は移動も自由となっている。
 ただし、大宮〜東京間は30分もかからず、乗り換えもあるため自由時間はほとんどないのだが。
 生徒の新幹線への乗り入れが完了した際、ネギは一つの違和感を感じた。

「……ん、今ので5班? 1班足りないぞ」

 30余人いる3―Aでは班を5人前後で構成しており、全部で6班まで形成している。
 1班から順に乗車し、今し方アスナ達の5班が客車へと入っていったが、そこで列が途切れてしまった。

「あぁ、それでしたら――」
「ネギ先生」

 奈留島が何かを言いかけるが、ネギの背後からかけられた声に遮られる。
 声に対して、ネギが体全体で振り返ると、二人の少女が立っていた。
 一人は、肩に身の丈近い長さを持つ袱紗を提げたサイドポニーの少女。
 もう一人は褐色の肌と、左目の下にある涙の形をしたタトゥーシールが特徴的な少女で、右手にはどこから飛んできたのか白い小鳥が乗っている。

「桜咲さんとザジさん……」

「はい。私が6班の班長だったのですが……、エヴァンジェリンさん他2名が欠席したので、6班はザジさんと私の二人になりました。――どう致しましょうか?」

「――あ」

 それを聞き、ネギは得心する。
 登校地獄。
 エヴァンジェリンを縛る呪いは“学校敷地から出る事を禁ずる”ものではあり、それは修学旅行も例外ではないらしい。

 ……修学旅行も学業の一つだと思うんだけどな……。

 エヴァンジェリンが行けない以上、従者である茶々丸も来ないのは自明の理ではある。

「……あれ? あと一人のお休みって……」
「Mr.スプリングフィールド」

 辺りを見回していたネギの肩に、奈留島の手が置かれた。
 奈留島は笑みを浮かべてネギを制すると、目の前に立つ二人に視線を送った。

「……じゃあ、ザジさんは3班へ、――桜咲さんは5班に加わってください。それぞれの班長には僕から言っておきますので」
「……っ!」

 その提案に反応したのは、刹那だ。
 身を強張らせ、視線が険しい物へと変わる。

「せっちゃん、一緒の班やなあ……」

 ネギの後ろから声が飛んだ。
 声は柔らかい口調で、京都訛りを含んでいる。

「あ……っ」










「――桜咲さん」

 刹那は、車両間にある通路を歩いていると背後から呼び止められた。
 周囲に人の気配がないことを確認し、後ろから歩いてくる奈留島に振り返った。

「……どういうつもりですか?」

 声を大にして怒鳴りたい衝動を抑え、なるべく平常に近い声音で訪ねる。
 言ってから、何日か前にも同じ質問をしたな、と気付くが構わない。
 奈留島は3秒ほど考え、

「……それは、学園長室での事ですか? それとも、――近衛さんと同じ班にした事ですか?」

 穏やかな、笑みすら含んだ問いに、っ、と息が詰まる。それと同時に、一つのことを理解した。

 ……先生は、私とお嬢様のことを知ってて……。

「……そこまで分かっていながら、なんで――」
「生徒に楽しい学校生活を送ってもらうのが、教師の務めですから。……こう見えて、職務には忠実なので」

 それに、と奈留島は今通ってきた道を見る。
 ドア越しに見える隣の車両では、生徒たちが座席をスライドさせて向かい合わせにしており、その中には黒の長髪をなびかせる純和風な雰囲気の少女も混ざっていた。

「――近衛さんの側にいた方が護衛し易いでしょうに」

「わ、私があまり近づくとお嬢様が裏の事情を知ってしまう恐れがあるので……」

 刹那が視線を落として答えると、奈留島は腕を組み、大きな頷きを返した。

「確かに。近衛さんが知ってしまうのは僕も好ましくありません。……ですが、違う班にいながら近衛さんを守るなんて、キャッチャーが外野へ飛んだ打球を取りに行くような物ですよ?」

「……それ、テレビゲームの『死狂い野球』ですよね? この間クラスで話していましたが」

 刹那の半目で放った問いに、奈留島は頭を掻きながら、

「いやぁ、まさかあそこまでヒドい代物だとは。……まぁそれはいいとして、あまり無理はしないように。――難だったら僕に全部任せても構わないんですから」

 奈留島の申し出に、しかし刹那は強く首を振る。

「いえ、そういう訳にはいきません! 私は、――私がお嬢様をお守りすると約束したのですから!!」

 直後、奈留島の表情が一変した。
 楽から、緊へと。
 普段は弓にしならせている瞳は細く鋭いものとなり、口が真一文字に結ばれる。

「――誰との、……約束ですか?」

 乾いた唇から、ややかすれた声で奈留島の問いがこぼれた。
 刹那はそれを答えようとするが、

 ……あれ? 誰との、……約束?

 誰と約束を交わしたのか思い出せない。というより、

 ……そのような約束をした記憶がない……?

 刹那が思案を巡らせていると、奈留島が膝を落とし、こちらの顔を覗き込むようにしている。

「……桜咲さん?」

「――と、ともかく! 私はお嬢様をお守りします!!」

 強引に話題を切り上げると、奈留島は緊張を解いた、困ったような笑みを浮かべ、

「――分かりました。そういうことなら僕も止めませんし、こちらも全力でサポート致します。……改めてよろしく、桜咲さん」










 東京を出たひかり213号新大阪行きは、初めの停車駅である名古屋へと向かっている。
 窓から見える景色は遠くにある物ほどゆっくりと移動しており、今は富士山が視界にさしかかろうとしている。
 その景色を、長めな前髪の下からのどかが眺めていた。

「新幹線って速くて豪華だよねー。まるで映画の1シーンみたい」

 のどかが外を見たまま呟くと、隣で手札からカード一枚引き抜き、テーブルへ表向きに載せたハルナが口を開いた。

「……シベリア超特急?」
「そんな映画の1シーンじゃなくて!」

 ハルナの例えに、のどかが勢いよく振り返り、否定する。

「じゃあオリエント急行殺人事件とかアトミックトレインとか」
「いや、もっと普通に新幹線出てる作品あると思うよ!?」

 その会話に加わる少女がいた。
 小柄な少女はハルナの向かいに座っており、手元のカードに視線を落としたまま、

「……新幹線大爆破」

「それ一番普通じゃない!!」

「というかその直球すぎるタイトルは何よ? 夕映」

 通路を挟んで反対側に座るアスナが問いかけ、夕映と呼ばれた少女がようやく顔を上げた。

「1975年に作られた傑作パニック映画で、悪党が新幹線に爆弾を仕掛けます。で、その爆弾が時速80km以下になると爆発する仕組みで、いかにスピードを落とさず解体できるかという――」

「その話、ハリウッド映画ですごい聞き覚えあるんだけど」

「あぁ、よく言われますが“そちら”は94年製。こちらの方が20年近く前です。
でも、そもそも暴走機関車という映画がありまして……」

「おぉ……、夕映が地味にテンション上がって饒舌だ」

 身ぶり手ぶりを交えながら話す夕映を見て、ハルナが驚きを隠さずに言う。

「――ま、それはともかくそろそろかな? 待望のお楽しみタイムと洒落こみま
しょうか!」

 そう言って立ち上がったのはアスナだ。
 お楽しみ? と隣に座る木乃香が首を傾げたのに対し、アスナはややオーバーアクション気味に腕を大きく広げ、

「食堂車よ!! 流れる景色をおかずにセレブな食事を楽しむのよ!」

「食堂車って……。アスナさん、それ結構昔に廃止されてますよ……」

 夕映が静かに指摘すると、アスナは数秒の硬直の後、大きくのけぞり、

「……嘘!?」

「アスナのニュースソースはいつの時代よ」

 ハルナの呆れを含んだ声に耳も貸さず、アスナが頭を抱えながら叫ぶ。

「ギャース! 人類は自らの行いに恐怖した!! 私わざわざこのために朝ご飯も抜いてきたのに!」

 通路上に膝をついて落ち込むアスナを見て、木乃香がカバンから一本の缶を取り出した。

「ほら、アスナ。コーヒーあげるから元気出して、……な?」

「おぉありがたい。……アスナの武将忠誠度は100になった!」

 安い忠誠心だな、と皆が呟くが、アスナは構わずプルタブを開け、

「いただきま――、あ」

 新幹線がカーブにさしかかり、不意な振動で缶コーヒーがアスナの手から離脱した。
 缶は中身の詰まったまま、重めの金属音を立てて黒い水たまりを広げる。
 周囲の全員が一時停止し、やがて、

「あ――っ!!」

「ど、どうしました!?」

 アスナの叫びを聞きつけたのか、ネギが近づいてきた。
 四つん這いの姿勢でぶつぶつと呟くアスナを横目に、周囲の皆が説明すると、

「お、落ち着いてくださいアスナさん! 次の名古屋駅で“名古屋ならではの物”を買ってきますから!!」

「うぅ、ネギ。今のアンタは輝いて見えるわ……」

 ネギが自分の胸を叩いて宣言し、空いた手をアスナが両手で包み込むように握る。
 名古屋駅に停車すると、菓子を買い足しに何人かの生徒が降り、その中にネギも混ざっていった。
 それを見送ってから、ハルナが呟く。

「そういえばネギくん、“名古屋ならではの物”って言ってたけど……、そんなに土産物に詳しいの?」

 それに対し、皆が一様に首を傾げた。
 しかし、アスナは苦笑しながら手をひらひらさせ、

「あー、別に構わないわよ。そういうことしてくれるのが嬉しいし。いっそ普通の駅弁でもいいわ」

 言うと同時、発車ベルが窓越しに、やや籠もった音で響いてきた。
 買い物をしていた生徒たちは駆け足で乗り込み、ネギも息を切らして乗り込んだ。

「お、お待たせしました……」

「いいのよいいのよっ。それより、何買ってきた……あれ?」

 満面の笑みでネギに歩み寄るアスナだが、ネギが手に持つ物を見て、徐々にぎこちない動きとなる。
 ネギが持っているそれは、青をベースとした色合いの、短めのバットのような形をしている。
 見たところプラスチックで出来ており、中身をくり抜いたような空洞はよく音が響きそうだ。

「――はい、ドラゴンズメガホンです」

「そーゆー意味じゃなーい!!」

 アスナが割れよとばかりに叫ぶが、新幹線は既にホームを離れようとしている。

「あー! 手羽先が! 味噌煮込みが!! だっ、誰か電車を止めてェェェ!! ……そうだ! 進行上の線路に子犬を迷い込ませるのよ!!」

 子犬!? と周りが問うと、アスナはギラギラさせた瞳と共に答える。

「そうよ! そうすれば失格覚悟でアメリカの超人が新幹線を止めてくれるわ!」

 そう言って駆け出そうとするアスナを、周りが一斉に押さえつけた。










「ま、まぁ、ここはおやつの時間にしようよ! 私、おいしいチョコレートを持ってきたから」

 そう言って、ハルナがカバンから言葉通りの物を取り出した。
 やや落ち着きを取り戻したアスナは深々と頭を下げ、

「ありがたい……」

「ウチはチップスの新作味を持ってきたえ」

 木乃香が筒状の箱を取り出し、チョコレートの横に並べる。

「そして私は先ほどカートの女性から買ったスーパージェット焼売をですね……」

 そう夕映が出したのは、一般的な箱詰めの焼売より、底の奥行きが2倍ほどある物だ。

「ちょっ、何それ!?」
「チョイスおかしいよ夕映!?」

「いえ、売ってるところを初めて見まして。その美味しそうな焼売そのものはもちろん、ヒモを引いたら5秒でホカホカという化学ギミックに惹かれて思わず所望してしまいました。――ホラ、ジェットですよ」

 そう言いながら、夕映がジェット焼売を掲げている。

「ハルナー、夕映のテンションがおかしいよ……」

 のどかの、戸惑いを前面に出した声にハルナが頷き、

「この娘もはしゃぐ時ははしゃぐのか……」

 ではさっそく、と夕映が箱の側面にある紐を引き抜いた。
 直後、噴射と呼べる勢いで放出される蒸気で、車内が白の一色に染まった。

「うわー!?」

「蒸気が!?」

「ジェットすぎる! つーか猛烈な焼売臭!? 夕映、フタ、フタぁ!!」

「は、はいですっ!」

 ハルナの指示に、夕映がとっさに横にあったフタで焼売の箱を上部から押さえつけた。
 ここで説明すると、スーパージェット焼売を加熱する素はカイロ同様、鉄粉や高分子吸水体を用いた化学反応である。
 カイロの最高温度が80℃なのに対し、焼売を5秒で熱するには瞬間的に180℃以上の温度が必要であり、よって、

「……熱っつぅう!!」

 触ればただでは済まない。

「何コレ! グレイトフルデッド!?」
「氷ー! 誰か氷をー!!」

 周囲への混乱も招き、車内が阿鼻叫喚となっている中、

「な、何事ですか!?」

 ネギが蒸気を掻き分けて渦中へ近寄る。
 眼鏡が一気に曇り、強烈な焼売臭が鼻につく。
 うわ、と、思わずメガネを袖で拭うが、

「え……っ!?」

 立ち込める蒸気を割るように、小さな物体がネギのスーツをかすめた。
 その物体が正面から背後へ抜ける際に、紙が擦れる音がしたのをネギの聴覚が捉えた。

 ……ま、まさか!?

 とっさにポケットを探り、布地の感触しか返ってこない事実に冷たい汗が噴き出した。
 体ごと振り返れば、黒く薄い何かが隣の車両へ繋がるドアの隙間を抜けていく所だった。

「っ……! る、ルナ先生っ、生徒達の点呼をお願いします!!」

「分かりました!」

 姿は見えぬが、蒸気の向こうから来た応えを確認し、ネギが疾走を開始する。
 右手を車両間のドアにかけ、左手はスーツの懐から予備の杖を取り出す。
 隣の車両へ入れば、車内の半ば過ぎ、天井近くを滑空している物体が目に入る。
 それは全体的に流線型の形状をしており、頭から背にかけては黒の、逆に腹の側が白の羽に覆われている。
 先端にある小さなクチバシには、先ほどまでネギが所有していた茶封筒がくわえられていた。

 ……ツバメ?

『兄貴!! あれは式神、日本のペーパーゴーレムっス!』

 内心で呟いた疑問に応えるように、肩に乗っていたカモが説明を加える。

『近くに術者がいるはずでさぁ! 早く捕まえねえと!!』

「う、うん!」

 しかし、車両にはまばらではあるが一般人もいる。
 ツバメの式神は更に前の車両へのドアをくぐる所だ。
 正面のドアを抜ければ、客車との間に公衆電話や洗面所が設置されたコンパーメントがある。

 ……次の客車に行くまでに捕まえなきゃ……!

 そう思った矢先、目の前のドアが勝手に開き、視界いっぱいに食料品や飲み物を積んだカートが迫ってきた。

「わ……っ!」

 身を捻って回避を試みるが、既にノっていた速度は殺しきれず、カートの脚ににネギの右スネが激突した。

「――っ!?」

 脳天まで痺れるような痛みが突き抜け、そのまま左半身が地面に擦りつけられる。

「あら。――堪忍な」

 女性の声がわずかに笑みを含んでいる気がしたが、今そんな事を考える余裕はない。
 ネギは構わず起き上がり、手に杖が握られているのを確認してから再び走り出す。
 閉じかけていたドアを引き留め、力任せに開けると、

「……え?」
「あ……」

 刹那がその手に茶封筒を握っていた。










 新幹線が滑るように京都駅のホームへ入っていく。
 停車して開かれたドアからは、乗客達が一気に駆け下り、ホームでむせこんでいる。
 その中、最後尾の車両から降りる人物がいた。
 走行中の車内でカートを押していた女性だ。しかし、先ほどまでは裸眼だったのに対して、今は縁なしの丸眼鏡をかけており、服装も乗務員の制服から、黒のスーツとタイトスカートに変わっている。

 ……あかん。あのイタズラは失敗やったわ……。

 女性は口元にハンカチを当てて、咳を一つ。
 出発前に駅で面白い物が売っているのをを見かけたので呪符を仕込んでみたが、自分への被害を考慮していなかった。

 ……今度は普通に式神使お。嫌がらせなら……、カエルやな。

 今後の方針を決めると、女性は口端に笑みを浮かべ、

「――けど、魔法先生言うたかて、あんなお子様やったらチョロいもんやな」

 呟き、新幹線の前方に視界を巡らす。
 大勢の学生達が降りていく中、乗車口付近にスーツを着た少年がいる。

 ……ほんの試しで式神突っかけてみたら、親書も簡単に盗れたしなぁ。

 最後に神鳴流の少女に邪魔されたが、威力偵察としては充分な結果だと判断する。
 もう一人、ヒョロッとした優男な教師がいたが、先ほどの騒ぎで動きがなかった所を見るに、こちら側とは無関係なのだろう。

「――後で仲間と合流したら、すぐに作戦実行や」

 くく、と小さく笑い続ける女性。
 それを、車掌が少し離れた位置から見てドン引きしているが、女性は気付かずにその場を離れた。










「何はともあれ京都着ー!!」

 新幹線を降りて早々、ハルナが両手を上げて叫ぶ。

「こ、ここからは改めて気を引き締めていきましょう」

「そ、そうだねー」

 少しフラついた足取りで、横に夕映とのどかが並ぶ。

「おうともさ! そのためにもまず深呼吸! さぁて京都の空気の香りは……」

 深呼吸をすること三度。最後に大きく一息を吸い、

「――焼売の臭いしかしねぇ!!」









注意・今回の話は、磨伸 映一郎様の漫画『氷室の天地Fate/school life』の第一巻の修学旅行の話のネタをパロディにしておられるそうです(コモレビ

あとがき
 映画って本当にいいものですねー(挨拶

 どうも、さかっちです。
 自分、修学旅行が沖縄だったので、京都は未体験だったり。
 ただいま秋の連休に行こうかと計画中。

 ちなみに、作中に出てきたジェット焼売は実在“しました”。
 発売時は一部で話題になったのですが、いざ新幹線の中で開けたら作中とほとんど同じ事態になりまして、光の速さで消えていきました。

 とまぁそんな所で。ではまた次回ー。

〈続く〉

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