―――2002年12月 4日 午後8時 麻帆良学園教職員宿舎 明石教授の部屋(書斎)
突然買い物袋を持って乱入してきたサイドポニーの元気娘…たしか「ゆーな」って呼ばれてたな
そのゆーなちゃん謹製オムライス(なかなか美味かった)を食べた後、教授に「話がある」と言われて書斎に連れてこられた
「まだお仕事〜?」と不満げなゆーなちゃんのグチに「ごめんな、ゆーな」と思いっきり嬉しそうに謝る姿を見て
思わず「親バカじゃね?」と思ってしまった……教授には黙っておこう
「いやいや始君、君も結婚して娘を持つと分かるさ」
結婚ねぇ…そういえば刀子さんはどうしたんだろ?朝に電話しても出なかったんだよなぁ…
着信は残ってるからケータイ見れば分かると思うんだけどもなぁ…
「さて、この部屋が僕の書斎だ」
「あ…はい、お邪魔します」
ま、今は明石教授の話とやらを聞いて…
「……って凄っ!本多っ!!」
「ははは、娘からは「片付けろ」って言われてるんだけどねえ」
まさに「本の山」だった、おせじにも広いと言えない部屋の両壁にはそれぞれ本棚が並んでいて
更にその本棚の前にも何の本だか分からないが難しそうなタイトルの本が山積みになっている
…こりゃあ少しでも触ったら雪崩起きるんじゃねえか?
「そこの空いている所だったら何処でも座って構わないよ」
空いている所って…どう見ても入り口から机の一本道の部分しか空いて無いんだけどもなぁ
とりあえず周りの本に触らないように通路の真ん中に座るか
「じゃあ僕も…と」
俺の対面に座る明石教授
「…で、どんな話なんですか?表?裏?」
「うん、両方だね」
「はい?」
ありゃ?予想GUY……じゃない、予想外だ
「学園長室で見たあの光の事と…始君と葛葉先生の事かな?」
…今なんて言った?
「驚いたよ、まさか葛葉先生を一目惚れさせて「チョット待ッタァ!」…どうしたんだい?」
「ソレハ誰カラ聞イタンデショウカ!?教授!?」
俺は明石教授に掴みかかり…は出来ないから、思いっきり詰め寄った!
若干チャチャゼロみたいな喋り方になってるのは気にしないで欲しい…ってかそれ所じゃない!!誰だってかどっちだ?
黙っとけって言ったのにバラしたヤツぁ!?
「葛葉先生からだけど…」
そっちか―――――――――――――いっ!!!
「いやぁ同僚としても僕個人としても嬉しいよ、これで葛葉先生から無理矢理飲みに連れてられないで済むからね」
「…何やってんだあの人は」
「確か「あんな男の事なんか酒と一緒に飲み干してやりますー!!」って言ってたよ」
「ヤケ酒かよ…大変でしたね…」
あの時も思いっきり絡み酒だったからなぁ、刀子さん
「…で式はいつ挙げるんだい?住む所は?子供は何人考えているんだい?」
「そこまでブッ飛んだ事まで話していないですよ、まずはお互いの事を知ってからにしましょうって事位しか言ってないですし」
刀子さんといい教授といい、どれだけ話をブッ飛ばせば気が済むんだか…って
教授?どしたの?そんな鳩が豆鉄砲食らった様な顔して
「いやあ最近の若い人はしっかりと考えているんだね〜関心したよ。確かに結婚は人生で1、2を争う大事だからね
やっぱりまず2人がお互いの事をよく知っておかないとトラブルの原因になるからね
僕も若い頃はよく死んだ家内と口喧嘩をしたものだよ、でも喧嘩をする度に強くなる絆ってのもあってだね……」
「ち、ちょっとその辺にしてもらって良いですか?まだ話す事有りますし…」
絶対語る、ほっといたらコレは1〜2時間は軽く語り続けるぞ
「おっと、そうだったね」
教授の表情がさっきまでの「親バカ」の顔から学園長室で見せた鋭い表情に変わった
「じゃあ、そっちの話にしようか」
「肩からの光の事ですよね」
「そうだね、簡潔で申し訳ないけどもあれはなんなんだい?」
エヴァや桜咲、タカミチさん辺りには正直に『悪魔化』です…と答えるが教授にはまだ嘘の方を答えおいた方がいいだろう
5日間もタダで泊めてくれる恩人に対して取る行動じゃないが最近どうもペラペラと喋り過ぎな気がしてなぁ…
「アレは俺のアーティファクトの能力が発動しかけていたんですよ」
「学園長からの書類に書いてあったね、能力は教えて貰えるかな?」
確かジジイは「変身」までしか書いてなかったな…手抜きか?
「変身…は書いてましたよね?まぁアレ一つにしか変身出来ませんし空も飛べませんから仮面○イダーとかと同じような感じですね」
「無詠唱の魔法っていうのは…
「学園長が見た事が無いって言ってましたから、アーティファクトのオリジナルじゃないかと」
関東…何とかの理事長のジジイが「見た事無い」とか「異質」とか言ってたからなぁ…俺だけのオリジナルなんだと思う
「使える魔法の系統は?」
「一番得意なのは氷…ですかね、それに取り立てて使えないってのは無いです」
使えないって訳じゃ無いが正直な話、火は食らいたくない。何でか知らないがアレだけ受けるダメージが大きかったからな
「凄いなあ大体2〜3個が普通なんだけれどもね、それに1種類増やすのだってそう簡単にはいかないってのに」
羨ましがられてもなぁ…ガキん時に『悪魔化』して以来ずっと使えるし、どんなモンなのかも知っている
けど、今まで考えないようにしていたけどもこれって一体どういう事なんだろ?
最初に『悪魔化』した以前からも使っていたり知っていたりしていたんだろうか…?
「ふむふむ…なるほどね、実力の方も夜の警備の方で実証されているし…っと、うん」
「いつの間にパソコンなんて出したんですか…?」
気付けば明石教授が小さめのノートパソコンにカタカタと打ち込んでいた
まぁ、俺が考え事にハマっている頃からなんだろうけどさ
「よし…こっちの方の話も終りだな」
パタン…とパソコンを閉じて明石教授の表情がまた「親バカ」に戻った
「さて、これからは人生の先輩として始君に結婚生活の何たるかを話してあげよう」
「いいっ!?」
「まだ結婚はしないとは言っても心構えだけは今から持っていた方が良いんじゃないかな?」
「いや…そのですね」
「大丈夫さ僕の家内もなかなか気が強かった方でね〜…きっと葛葉先生と通じる物があると思うよ
そうだな…まずは式を挙げる前からの事を話していこうか、まず仲人の話からだけども…」
待ってえええぇぇぇ―――――――――――!!!!!
…
……
………
「―――でね式の和洋に関わらずに…」
「………はぁ」
…
……
………
「―――新婚旅行は自分の意見も効かせつつ相手の行きたい場所に決めるってのが…」
「………。」
…
……
………
「―――最初の子供は父母両方が不安になるものさ、それをお互いに支えあっていく事こそが」
「………。(撃沈)」
…
……
………
―――4時間後
「―――という訳さ、全てとは言わないがこの話を君の新しい生活の参考にしてくれると嬉しいな」
「ハイ、アリガトウゴザイマシタ…」
や、やっと終わった…俺の事を思って話してくれたんだろうけども正直4時間ブッ通しは勘弁して欲しい…いやマジで
「あ、そういえば―――」
まだあんの!?もうやめてぇ!!
「今月の31日に学園長から仕事を言い渡されるから覚悟しておいた方が良いよ」
「31日?大晦日ですね、大掃除でもするんですか?」
「うん大掃除と言えば大掃除だね」
「「学園長室の掃除をするんじゃあ」なんて言ったら部屋に置いてあるもの片っ端に窓から投げ捨てますよ?」
「いやいやそういう物じゃないよ、毎年全魔法先生と魔法生徒恒例の大掃除なんだよ」
「……つまり裏の仕事って事ですか?」
「うん、詳しい内容は3〜4日位前から打ち合わせするからね。まぁ準備早い人はもっと前から始めてるね」
「了解です」
毎年恒例ね…なんだかかなりの大事みたいだな後でタカミチさんか刀子さんかにでも聞いて………あ
「教授、ちょっと電話かけていいですか?」
「お、早速葛葉先生と話をするのかい?」
「いえ、エヴァから着信あったんですよ。返しておかないと次会った時に何されるか分かんないんで…
刀子さんは別の用事でかけたんですがどうも出なくて…」
そう言って教授に携帯の待受け画面に書いてある「着信有り:9件」の文字を見せて、それを見た教授は苦笑いしながら頷いてくれた
ってか、4時間で着信9件って出なかった俺も俺だがそこまでやるかね?エヴァさんや?
―――○時だよ!○員集合〜!!
あ…
―――え○や〜こ〜らよっと!どっ○いせのこ〜らよっと!!
エヴァの携帯の待ちうたド○フにしてたな………俺が
こりゃあ結構ヤバいわ…DVD−BOX手に入ってテンション上がった時につい入れたんけど…これは無いな
「始か!?」
「おう、悪いなエヴァ。今まで電話出来なくて」
「グスッ…お前が悪いなど当たり前だ!それとお前は今何処に居る!?」
「明石教授の部屋に泊めて貰える事になってな今居るんだよ……ところで今お前泣いてる?」
「な、泣いてなどいない!これは…風邪だ!!」
「嘘だあ、吸血鬼が風邪引くわけないだろ」
「嘘ではn「はいはい明日見舞いに行くから大人しく寝てな」……もう知らん!!必ず来い始!!!必ずだぞ!!!」
ガチャッ…ツーツーツー
「はっはっは、しょうがない奴ですねーエヴァはー」
「あっはっはっは……」
―――2002年12月 5日 放課後 エヴァ宅
「おーっすエヴァー、茶々丸ー」
「やれ茶々丸」
「はい、オペレーションを開始します」
「へ?」
ガシッ!
いつの間にか後ろに回った茶々丸に羽交い絞めにされた俺はそのまま別荘に連行され
「お疲れ様です、始先生」
「やあ此花先生」
なぜか刀(太刀?)を持って目線を合わせない桜咲と両手に銃(エアガンと思いたい)を持った龍宮が居た
「オー、ヤット来タカ」
さらに奥からチャチャゼロ(久々に見た気がする)が鉈とデカいナイフを持って近づいてきた
「揃ったようだな」
後ろには黒いマントとそれ以上に黒い気…もしくはオーラを背負ったエヴァと
無表情だけど確実に不機嫌MAXの雰囲気を醸し出している茶々丸が居て…
「えー…どういう事?」
「なに、私に無礼を働いた上躾がなっていない奴を少々躾けようと思ってな」
エヴァの両手に魔力の塊が出てきたと同時に後ろの方でも「ガチャ」とか「チャキ」とか物騒な音が聞こえてきた
「あー…エヴァ…?」
「何だ?言ってみろ」
「風邪は…?」
「『
ふざけんな!!生身で魔法なんぞ耐えられる訳ないだろうが―――!!
ドッ!!
「『神鳴流奥義 雷鳴剣』!!」
ド―――――ン!!
「すまないな此花先生、これも仕事だ」
ビスビスビスビスビス!!
「……失礼します」
ドコドコドコ!!
「ケーッケッケッケッケ!!」
ザクザクザクザクザク!!
「歯を食いしばれ!始!!『
嘘だろぉぉぉぉぉ―――!?
ド―――――――――――――――ン!!!!!
…
……
………
今日ほど…今日が初めてかもしれないが『悪魔化』が出来て良かったと思ったことは無い…
生身だったら確実に今日で天に召されてるぞ、コレは…
ってか俺が一体何をしたっていうんだよ………ガクッ(昇天)
あとがき
ここ数日ハンパ無い寒さが身にしみる−20℃ってありえないから!……S’です
明石教授も完全な厚意で泊めた訳じゃなかたって事です、まあ後半は完全にお節介やきなオバチャン化www