―――2002年12月29日 午後6:00分 麻帆良学園女子中等部 会議室

「今年も3人を1組として、学園都市の東西南北に戦力が均等になるように―――」

淡々とガンドルさんがホワイトボードの前で話しているのを会議室の後ろの方で聞いてる俺とエヴァと茶々丸
因みに会議が始まるギリギリに会議室に入った為にガンドルさんの視線が痛い
…しゃあないでしょう、隣に座ってるエヴァがマジでギリギリまで出なかったのが原因なんだから
もしかしたらこの2人って俺がバイクで迎えに来なかったら確実にサボってたのではないだろうか?

「次、東地区担当の組み分けを発表する……1班、葛葉先生、高音・D・グッドマン君、佐倉愛衣君―――」

呼ばれた順にそれぞれ返事をしていく―――あの高音って奴は思いっきり大声で「はいっ!!」…なんて返事しやがった
緊張してんのか思いっきり意気込みしてんのかわかんないけども……ごめん、正直煩かった

そうそう、今この会議室にいるのは魔法先生だけじゃなく魔法生徒も大勢いる
…と言っても実際に戦うのはごく少数で大体は裏方に回るそうだ、桜咲とか龍宮は思いっきり前線だけどな

「11班、此花先生、絡繰茶々丸君、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル……君」
「ういっす」
「はい」
「…フン」

さっきの高音に比べればやる気無さそうに見えそうだけども…そんなことは無いからね
それと刀子さんと桜咲、こっち見て悔しそうな視線を飛ばすの止めて下さい。ガンドルさんの視線より痛いですから
因みに、刀子さんとは部屋の修理が終わった日の夜に何とか連絡が取れて何とか話し合う事が出来た
どうも連絡が取れなかった原因は俺の部屋の壁に大穴開けた事を後悔しててず〜っと自己嫌悪に陥ってたそうだ
原因はジジイにあるし部屋だってジジイ持ちで直ったんだから刀子さんが気にすることは無いと伝えると
恐る恐る確認した後一気に抱きついてきてわんわん泣いて、更に「もう捨てられたかと…」って言ってました
因みにこの直後、お祝いに来てくれたエヴァ、茶々丸、桜咲、龍宮にがっつり見られてしまい、エヴァと桜咲が
刀子さんに詰めより口論、恐らく後一歩の所で手や魔法や刀が出たかもしれない状況にまで発展した(ギリギリで収まってくれた)
…下手すると部屋の壁にもう一度穴が開いたかもしれない(茶々丸は撮影、龍宮は俺を見てニヤニヤしてた)

「東地区…ね、大体どの辺だ?茶々丸?」
「女子寮等の住宅が多い地区です」
「…やり辛いな」
「住宅街ではそうでしょうが、郊外になりますと木々が生い茂った森林地区になります」
「やるんならそこだな……ってかそこしか無いじゃねえか」

…確か刀子さんも東地区ってガンドルさん言ってたし、ちょいと後で話してみるか

「―――各員当日は午後5時に担当地区に集合し準備に当たって貰いたい!それと各地区の魔法先生はこの後
 個々に集まって作戦等の打ち合わせをして頂きたい…以上、解散」

ちょうど良いタイミングだな…って

「エヴァ帰らないのか?」
「お前は私を歩かせるつもりなのか?」
「…帰りも送れってか?」
「申し訳ありません始さん」

…ま、今更言っても聞く奴じゃないしな

「送っても良いけど、打ち合わせあるから時間かかるぜ?」
「問題ない、私達も出る」

はい?

「別に出るなとも言って無いし、聞かれて困るものでもないだろう」
「まあそうだけど…意外だな」
「フン、それに私達だけではないからな」
「え?」

そういって顎で向こうを指すとさっき元気良すぎるほどの返事をした高音と佐倉って子が刀子さんとすでに話をしている最中だった

「お疲れ様です、葛葉先生」
「お疲れ様です…その2人も打合せに?」
「ええ、ですからちょいと広い場所で打合せしましょう」
「分かりました…でしたらここで良いでしょう、他の班の人は皆出て行ったようですので」

言われてみると確かに会議室に一杯いた魔法先生と魔法生徒が1/4位になっていた

「ですね、丁度いいです」

そんなこんなで打合せ開始、流石に毎年恒例なのでどの班が何処に配置するかとか連絡網をどうするとかは直ぐに纏まった…が
どうしても一つ気になることがあった…

「ところで俺や葛葉先生の様な肉弾戦の前衛って殆どいないんですね」
「そうですね…それはこの班だけでなく学園全体の問題ではありますが」

えーっと俺が知っているのは…俺と刀子さんとタカミチさん、それにガンドルさんがCQCって格闘技を使ってるって話だけども…
…ちょっと違うかな?

「外からスカウトするとかはしないんですか?」
「戦力が整う事は魅力的ですが、それが「草」である可能性もありますので…」

「草」ってのは簡単に言うとスパイって意味…因みに刀子さんから昨日教えて貰った

「って事は…麻帆良の関係者で前衛が勤まる奴か」
「我々(魔法先生)側としては一般の生徒や教員は関わらせたくありません」

そうだな、その辺は当然だよな……ん?そう言えば

「な、何だ急に人の顔をじろじろ見おって!」

…いる。麻帆良の関係者で前衛が勤まる奴が、しかも思いっきり超ベテラン

「なんとかなるかも…」
「だから何だ!?」
「ウチの身内で前衛勤まるかもしれないのが一人いるのを思い出したのさ」
「「なんだと!?(ですか!?)」」

かもしれないだからねー…上手くいくかどうかやってみないと分からないし…
ま、後は野となれ山となれ……ってか?





―――2002年12月29日 午後9:00分 エヴァ宅内リビング

「…で、お前の身内とやらは何処のどいつだ?」

私の家のリビングでキョロキョロと何かを探す始に問いただした

「何処のどいつ…ってかチャチャゼロだぜ、さっき言ってたの」
「チャチャゼロは『別荘』の中でなければ動けないのは知っているだろう」

私に掛けられた忌々しい『呪い』の所為でな

「まーな、チャチャゼロはエヴァからの『魔力』で動いている…けども今は喋れる位の『魔力』しか無いから動けない」
「その通りです、始さん」
「…オウヨ、魔力ガナイカラコンナ紐モ解ケヤシネエ」

この前勝手に私の秘蔵のワインを盗み飲んだ事の仕置きとして紐で雁字搦めにしておいたチャチャゼロが
他の人形達の隙間から声を出してきた

「なにやってんだ?チャチャゼロ?」
「ゴ主人ノ趣味ダ」
「違う!!それは仕置きだ!!」
「…やっぱり趣味だろ」
「違うと言っているだろうが!!それはチャチャゼロが私の秘蔵のワインを盗み飲んだ事への仕置きだと言っている!!!」

ええい!どうして始や『ヤツ』はこうも私をからかうのだ!?私は「闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)」、「人形使い(ドール・マスター)」、「不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトゥ)」、「悪しき音信(あしきおとずれ)」、「禍音の使徒(かいんのしと)」、「童姿の闇の魔王(わらべすがたのやみのまおう)」と称された悪の魔法使いだぞ!!見た目か!?全ては見た目が悪いのか!?

「ったく、このドS幼女が」
「うが――――――――――っ!!!」
「マスターがあんなに楽しそうに…」



……

………

―――1時間後

「…とにかく…ぜぇっ…話を…はぁっ…元に…戻せ…」
「…おう………ちょっと…息が…ぜぇっ…落ち着つく…まで待って…くれ」



……

………

―――10分後

「…エラい目にあった」

…自業自得と知れ

「で、話の続きだけども…逆を言ったら『魔力』があれば動けるんだろう?」
「そうだ…だが私は学園の有象無象共にチャチャゼロとのラインを繋げさせる気は無いぞ、チャチャゼロは私の従者だ」
「ラインって何?」
「マスターと姉さんの間にある目に見えないパイプの様な物とお考え下さい」
「ありがとう、茶々丸」
「…で何をする気だ?」
「俺の『魔力』の一部をチャチャゼロに渡す」

始なら構わんか…いや、もしそうなったらチャチャゼロを黙らせる事が出来なくなるな、止めておこう
それに言葉のニュアンスが何処か違う気がする

「繋げさせんぞ」
「多分…違うと思うし、まぁちょいと見とけ」

「見とけ」の所から変身した始は右手をチャチャゼロに向けた…ラインは繋がせんが、お手並み拝見といこうか

「『マカトラ』」

淡い光がチャチャゼロを包みこむ、そしてそのまま光が消えたあたりからチャチャゼロに変化が見えた

「オ…オオ…」

…ブチッ!!!

「動ケルゾー!!!」

何だと!?どういう事だ!?

「始!何をやった!?答えろ!今すぐだ!!」
「マスター、そんなに頭を振っては始さんが喋れません」

む…、すぐに聞き出したい所だが始が喋れなければ進まんな

「…エラい目にあった」

…すまなかった

「今俺がチャチャゼロに掛けたのは、俺の魔力の一部を他人に分け与える魔法なのさ…多分ラインってのは繋がってないと思うぜ」
「どうだチャチャゼロ?」
「ン〜…確カニ始ノ言ウ通リ、ゴ主人以外ノラインハ繋ガッテナイゼ」

仮契約も詠唱も精霊への働きかけも無く、呪文(スペル)一つでチャチャゼロに魔力を供給する…か
相変わらずお前は突拍子も無いことをしてくれる

「…で、コレ一回でどれ位動けそうだ?チャチャゼロ?」
「ソウダナ、普通ニシテルノナラ一晩イケルナ」
「保険でもう一回掛けておいた方が良さそうだな、当日は暴れて貰らわんきゃならんし」
「ケケケ、暴レラレルノハ大歓迎ダ…当日ッテ何時ダ?」
「大晦日の夜、毎年恒例とやらの大掃除。因みにチャチャゼロの事超ベテランって伝えてあるから」

麻帆良の関係者で前衛が勤まり超ベテラン…か、確かにチャチャゼロは私の最初の従者だ
今は『呪い』の所為で普段は役立たずだが、確かに経験は学園中の誰よりもある…其処に目を付けるとはな
クックック…出鱈目な所といい今といい、お前は私を楽しませてくれるよ

「ヨシ!始!!今夜ハ俺ガ動ケルヨウニナッタ記念ダ!!飲ムゾ!!」
「良いねえ!何かつまみになるの作ってくる!茶々丸手伝ってくれないか?」
「分かりました始さん」
「ジャア俺ハゴ主人ノオ気ニ入リヲ持ッテ来ルゼ!隠シ場所ヲ変エタ様ダガ問題ネエ」

…何?

「5〜6本は持って来いよ」
「ケケケ、シケタ事言ウナヨ。アリッタケ持ッテ来ルゼ」
「待てぇ!!!貴様等ぁ―――――!!!」




あとがき

祝20話……だけども原作とはまだ合流しないこのSS!ちょっと(?)寄り道して行きたいと思っているS’です
そして知る人ぞ知る『マカトラ』!因みに俺はゲーム中で1回も使ったことがありませんww
日の目が見れて良かったなーww

〈続く〉

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