―――午後20:30 麻帆良学園郊外の森

「…これは私の出番は無いな」

戦闘中にムダ口をこぼすのは褒められたものでは無いが、今この現状を見ると思わず言いたくなる
侵入者が召喚した30体ほどの鬼達を目の前にいる刹那と此花先生(変身済)が
「喰らいなぁ!!『桜花閃乱』!!」―――ぐおおおぉぉぉ!!
「『神鳴流奥義 百烈桜華斬』!!」―――ぎゃあああぁぁぁ!!
…と圧倒的(贔屓目で見なくてもそう感じる)に戦っているからだ

「き…貴様等!!何をやっている!?奥の奴を狙え!!」

鬼達の後ろ居る侵入者が怯えながらも私を狙うように指示を出して来た

「ム…来るか…?」

刹那たちと戦っている鬼達の後ろから3体の鬼が私に襲い掛かる為に飛び出して…

「させっかよ、『マハジオンガ』!」―――おおぉぉおぉ!!!

…私の所に向かう前に此花先生の雷の魔法(?)で3体とも還された、これは本当に私の出番が無いな
まぁ正直楽でいいんだが、2人共から何処と無く必死さが感じられるのと
いつの間にか刹那が下の名前(先生は付けているが)で呼んでいるのが少し気になっている

「ふむ…必死さは兎も角、刹那が下の名前で呼んでいる事については終わった後に少し話を聞いた方がいいかもしれないな」

2人揃って時間ギリギリで来るといい、急に下の名前で呼ぶ事といい…
今此処に朝倉と早乙女が居たら水を得た魚の様に生き生きとしていただろうね

「…さて、あまり楽をし過ぎるのも問題だし今のうちに侵入者本人を拘束しに行こうか」



……

………





龍宮を狙って飛び出した鬼達を始先生の魔法で倒して少し経った頃、残っていた鬼達が一斉に還りだした
恐らくは龍宮が召喚主である侵入者を捕まえたのだろう、私は周りを警戒しつつ、夕凪を鞘に収めて始先生の方を向くと…

「ええかニイちゃん!次は勝ったるからなぁ!」
「勝ち逃げするんやないでぇ!」
「上等だ!いつでも来いっての!コラァ!!」

挑発しながら消えていく鬼達と右手の中指を立ててそれに思いっきり乗っかっていた始先生がいた…

「な、何やってるんですか!?」
「桜咲、お前も何か言ってやれ!このままだったら負けるぞ!」
「何に負けるんですか――!?」



……

………

「アイツら…次会ったら絶対全力でシメる!!」
「…まだ引きずってるんですか」
「アイツら俺の事「筒頭」とか言いやがった…あんにゃろう……」

こ…子供のケンカですか…?それよりも、このままではずっとこの調子だ…どうにかしないと…

「すまないが…この男を連行して欲しいんだけどもお願いできるかい?此花先生?」

龍宮!助かったぞ!…だが用事を押し付けても良いものなのか…?

「ん?引取りの人来るんじゃなかったっけ?」
「確かに待っていれば来るが、連れて行った方が仕事が速く終わるのさ」

た、龍宮…それは…つまり…

「…つまり早く帰りたいから俺にソイツ連れてとっとと行って来いと」
「話の分かる先生で助かるよ」
「はぁ…ま、年頃の女の子を遅い時間まで引っ張り出すよりはマシか…で、誰だったっけ?」
「2ブロック先に居る神多羅木先生だよ」
「あのヒゲグラの人か…分かった。じゃあ報告とかも俺やっとくから、2人は早いとこ帰りな」
「ええっ!それは…そこまで始先生一人でやってもらう訳には…」
「と…言うか此花先生、私が言うのも何だが『こっち』は今日が初仕事なんだろう?手順とか分かるのかい?」
「その辺はタカミチさんから聞いてるから大丈夫だよ。それと桜咲、お前はもう少し『大人を頼る』って事も覚えな
 別にお前位の歳なら年上に迷惑かけたって全然OKなんだから」

ぽんぽん

「そ、そんな子供をあやすような真似しないで下さい!!///」
「あっはっは―――――じゃあ連れてくからなー」

そう軽く笑いながら縄と札で拘束された侵入者を担いで神多羅木先生の所へ向かって行った
…別にそこまで子供扱いしなくてもいいじゃないですか、始先生
それに龍宮もいくら早く帰りたいからってそこまで急に先生を顎で使うような事を…

「刹那、考え事をしている中悪いが少し聞きたい事があるんだが…ね」

え?龍宮?聞きたい事は良いが、どうしてそんなに近づいてくる?

「別に構わないが…どうしてそんなに迫ってくる?」
「いや簡単さ…『逃げられないように』さ」
「は?龍宮?何を言って―――」
「2人居ると二手に分かれて逃げられる恐れがあるが、こうして1人になった時に…こうして抑えながら質問すれば逃げられないだろう?」
「何をバカな事を言っている、兎に角離せ」
「話すのはそっちの方だよ刹那、それにバカな事じゃない聞くことはいたって簡単な事さ―――今日此花先生と一体何をしてきたんだい?」
「――――――――っ!!」

えええええっっっ!!??
ど…何処でバレてしまったんだ!?別に私は特別変わった所はなかったぞ!うむ!!
始先生か?始先生の方が普段とおかしかったのか?そこを龍宮が看破して今此処で私を問い詰めているのか?
そう、そうに違いない!

「――どちらかと言えばおかしかったのは刹那の方だったんだが」
「なっなぬを!?」
「確かにお前が急に下の名前で呼んだり…一度手合わせをしたとは言え見事な連携で相手を倒していったりと
 …怪しい所はあったが。一番あやしかったのはお前が此花先生を庇ったり、頭を叩かれて顔を赤くした所だよ」
「………。」

うう……

「幸いなことに此花先生も気を利かせてくれていて、此処には私達しか居ない」
「!!――それで急に始先生を!!」
「部屋に戻ってからでも良かったんだが、騒いだら皆が来てうやむやになってしまうだろうし…」

計画的犯行か!?

「…さて、あまり遅くなってしまうと此花先生の厚意を無駄にしてしまうな―――早めに白状した方が身のためだよ、刹那」

いっ…い―――――――――や―――――――――や―――――――――!!!!!!!!!



……

………

結局、執拗すぎる攻めに抗う事が出来ずほぼ全て(翼に関しては何とかはぐらかした)話してしまい

「なかなか良い話を聞かせてもらったよ」

…と満足した表情で龍宮から開放された
これは暫く…かなり長い間続く事になるだろうな……すいません、始先生





―――刹那が龍宮に尋問(?)されている頃

「……なんか、思ったよりもかなりあっさりと離れられたな」

あの像ん所からの桜咲の必死さといい、龍宮の視線といい…終った後に確実に問い詰められるかと思っていたんだけども

「自主的に残りの仕事引き受けたから許してくれたのかな?…まぁとにかくとっとと俺も仕事終らせるか」

『い―――――――――や―――――――――や―――――――――!!!!!!!!!』

「…桜咲?」
 


……

………
 
「…気のせいか?」

―――翌日、何故かこの上ないほどの笑みを浮かべた龍宮と若干涙目で俺を睨んで来る桜咲が俺の部屋に朝早くから乗り込んできて…

「先生、刹那の抱き心地はどうだったかい?」
「ぶ―――――――――っ!!!(牛乳噴射)」

なんていう爆弾(核)を落としていったのは別の話




あとがき

13話の続きです。主観ですがたつみーは弄り役がかなりハマっているような感じがします
そして言わずもながら刹那は思いっきり弄られ役だと思ってます

〈続く〉

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