―――午後11:00 女子寮管理人室

「あ゛―――っ疲れたぁ―――…」

俺は女子寮内の中にある自分の部屋(管理人室)のソファーにうつ伏せに倒れた
…何故にここまでボロボロになって帰ってきたかというと
1週間前、桜咲が辻斬りし、タカミチさんに晩飯を奢らせた日の翌日にタカミチさんと龍宮がジジイに事の全て(奢らせた事も)を報告した
結果、俺は指導員となって2日目で1週間の謹慎を食らった…(桜咲も謹慎1週間)その事は当然ながらエヴァの耳にも入り
「ほぅ…始、お前はあの程度の相手すらも『悪魔化』しないと倒せなかったのか…」…といきなり不機嫌MAX、その上
「…ふむ丸々1週間とは言えんが、時間が出来た訳だな。喜べ、始この『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』たる私が直々にお前を鍛えてやる
 …拒否権なんて物は無い物と思え」…なんて言われて茶々丸に連行される形でエヴァの別荘へ
外での3時間…別荘内では3日をここ1週間(因みに日中はきちんと管理人代理してました)休み無しで続けていた…
得る物も確かに有ったがどっちかと言うと失った物の方が大きいかもしれん

「駄目だ…風呂は明日の朝入ろう…」

別荘でも一応食事や風呂等といった休憩時間はあったのだが7割位の確立でエヴァがチャチャゼロを連れて
時、場所を問わず襲い掛かってきていた…1度風呂入ってる真っ只中に襲撃されもした(俺、すっぽんぽん…)
…そういう事があり別荘内ではまともに休めず、結果として自分の部屋でしか休息を取れていなかった

「もぅ…限界…だ…zzz……」



……

………





―――同時刻 女子寮内 桜咲刹那、龍宮真名の部屋

「………ふぅ」

これで何度目だろう?悩んでは行き詰まり、ため息を吐く…私は先週『あの時』からずっと同じ事を悩み続けていた
そんな私を見かねたのか、同じく先週から見続けてたルームメイトの龍宮が話しかけてきた

「…まだ気落ちしているのかい?刹那?」
「龍宮…?」
「そんなに先週の事が気になっているのか?別に此花先生は気にしていない様子だったし、お前もそこまで気にすることもないだろう?」
「別に…その事では無い……」
「……惚れたか?」
「―――っ!!ち、違う!!変な事を言うな!龍宮!」

な…なぬを!?いや何を言い出す!?別に、私は、断じて、そういう、感情の、事で、悩んでは、いない

「おや?違ったか?まぁ何にせよそこまで引きずるんだったら1度位此花先生の所に行って話してくればいいじゃないか?」
「あぁ…それは…そうなのだが…な」
「フ…面と向かって言えないのなら恋文でも書いて渡してみるのも手だぞ」
「っ!?茶化すな!龍宮!!」
「フフ、そうだったな…何にせよ一人で悩んでも何も進まない、早いところ話に行った方がいい」
「そうだな…」
「それじゃあ私は寝るよ、刹那も最近満足に寝ていない様に見えるから早めに寝なよ」
「わかった、そうさせて貰う……ありがとう、龍宮」
「……おやすみ、刹那」

そう言うと龍宮は寝室に入って行った
確かに私は先週からまともに寝てはいない、明日にはあの件での謹慎も解ける。いざ戦いで身体が動かなかったらそれこそ問題だ

「今日はもう寝よう…」

そうして私も布団に入り目を閉じ眠ろうとしたが、あの時此花先生が言った『あの一言』が何時までも消えないままだった…
結局この日も寝たのは遅い時間となってしまい、龍宮の心使いを駄目にしてしまった



……

………




―――同時刻 女子寮内 長谷川千雨の部屋

カタカタカタカタカタ…

いつもと同じ時間、同じタイピング、そして変わらない『ちう』のファン達…だけど私は違う、私だけが違っていた

「…チッ」

何故か分からないイラつきがいつまでも消えて無くならない、イラつきの原因は分かっている、あの新しく入った広域指導員の此花だ
アイツは先週落とした私の生徒手帳を律儀にも放課後の教室に届けに来た…それは別に問題無い
この間も古菲が手帳を落としそれを高畑が届けに来ていたしな。それを見ていた神楽坂が恨めしそうに見ていたが……話が逸れた
兎に角、届けに来た迄は問題ない、問題なのはそれからだ
入り口のドアをノックしてドアを開けて…事もあろうに大声で…「生徒手帳を落としたうっかりさんな長谷川千雨さんは居るか〜?」
なんて嫌が追うにも注目を浴びる様な呼び出しをして、更に取りに行った私に…
「ん…?その眼鏡…伊達か?勿体無い、結構可愛い顔してるのになぁ」…なんて爆弾落として行きやがった!!
当然お祭り好き、馬鹿騒ぎ大好きなウチのクラスの連中はこぞって
「何?何?どういう関係?」とか
「新任の先生にもう手を出すなんてやるね〜」とか
「告るの!?告るの!?」とか言いながら集まってきやがった!!
当然私はそのまま逃げ出した…が朝倉のヤツが1時間位しつこく粘りついて来やがった…あれは恐らく明日以降も続くだろう

「明日…学校休むか…?」

明後日は休みだし、ここ数日皆勤だったから急に休んでもあまり疑われないだろう
…私が居ない間に何処までウワサが膨らんでいるかハッキリ言って不安以外の何者でも無いが

「…朝倉に追いかけられるよりはマシか、別に居留守を使ってれば良いんだし」

そう決めた私はこのイラつきが収まるまでチャットをすると決めた

「さて…次の話題は何にしようか…?」



……

………




―――同時刻 エヴァ宅 リビング

始の修行が終わり戻った私は茶々丸に紅茶を淹れさせ、それを飲みながら今回の修行の事を思い出す
今回は偶々居たタカミチも連れて『気』と『魔力』の扱いについて教えるつもりだったが…

「…デタラメだ」
「お言葉ですがマスター、これは実際に起こっている事です」
「それは分かっている…だが、こうも言っておかんとやってられん」
「…高畑先生も唖然としておられました」
「ただでさえ人から悪魔に変わると言うだけでもデタラメなのだが…まさかこの今回の修行で『気』の扱いを覚えるとはな…」
「始さんが『魔力』を扱えない反動なのでしょうか?」
「いや…始は「タカミチさんを真似てみた」と言っていた、元々素質はあったかも知れんが…
 見ただけでいきなり『気』での身体強化と『瞬動』を習得するなんてデタラメ以外何と言う?」
「……………前例がありません」

だろうな…600年生きたこの私でさえ『見た』だけであそこまで完成度の高い『気』を扱う者なぞ見た事も聞いた事も無い
…だが其れ故に、始に対しての興味が一層強まったもの事実



……

………

…き、興味と言っても!これは別に変な意味など無い!!
これは…そう!600年生きてきた私の退屈を埋める興味であって!他の意味なぞ一つも…

「マスター、始さんが『魔力』を扱えない事への検討結果が纏まりました」

…む、早いな。正直もう少し時間が掛かるものと思っていたのだが…いや、早く終って悪い訳では無いぞ

「…話せ、茶々丸」
「はい、始さんの周囲…ほんの僅かな範囲ですが『魔力』の濃度が著しく薄くなっています」
「薄く?」
「はい、これはまだ仮定の域ですが始さんは無意識に周囲の『魔力』を吸収、又は無効化しているのではないかと」

…魔法無効化能力者?いやそれならば修行中にも何かしらの事が起こっている筈
現に始は幾度と無く私の魔法を食らって(死にかけたりして)いたのだ
完全に使い切れていないだけかもしれんが無効化能力者という線は限りなく薄い

「無効化では無いな、吸収の方が正解かもしれん」

別荘の中には外よりも『魔力』が充満している、普段の実力以上を出せても不思議では無いか

「茶々丸、明日からの修行はもっと厳しく行くぞ」
「……了解しました」

何か間があった様だが…気にしないでおこう
…ところで

「…チャチャゼロは何処に行った?」

ヤツが居ない、ここ数日修行以外は空気に近くなっていたが目の届く範囲に居ないと妙に不安になる

「姉さんなら、まだ別荘の中に居ます」

別荘だと?…まさか!?

「呑んでいたか!?」
「はい「ドウセ俺ハ〜…」と言いながら」
「茶々丸!?もう一度中に入るぞ!!」

ヤケ酒でもして…また私の秘蔵のワインに手を出してはいないだろうな!?
あれは始と2人っきりの時に……じゃない!!
…兎に角!!もし手を出していろ…完全にバラして一から調整し直してやる!!覚悟しておけ!!!





あとがき

始がチートにまた一歩近づいた12話です
『悪魔化』>>>>>『人間』な力関係ですが、それなりに強くてもいいだろう…と思い今回は書きました
今後も始に「ネギま!」側の魔法を使う予定は無いです、多分使うことは無いかと思います………タブンデスヨ

〈続く〉

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