第九話:秋葉原という場所にも一度行きたいのですが……

―東京都・原宿―

「ここが、都会のジャングル……原宿という場所ですか……」

日曜日ともなれば、外出する人が多いことには頷けるのですが、ものすごい人の量は少し新鮮です。勿論、麻帆良学園の登校風景も負けず劣らずですが、ここまで老若男女揃っているのは新鮮に他ならないでしょう?

「修学旅行に行くのに、服が無いんじゃ楽しめないじゃん?」
「いや……メイド服で良いじゃない」
「それは駄目や!メイド服は視線を集めすぎるって!」
「……それに関しては、和泉さんに同意します」

私服姿の亜子と裕奈、制服に身を包んだ刹那に対してではなく、一緒にいる私にばかり注がれる好奇の視線。その理由は……私が来ているメイド服にあるそうで……。
はて、何がおかしいのかは分からないのですけれども。

「……大体、制服を着てくればこんなに見られなかったのに」
「それは刹那が激しかったら……もう着れなくなっちゃたし」
「えっ、桜咲さんもそういう関係の人?」

私の発言に、裕奈と亜子が刹那に視線を送る。私は別に、間違ったことは言っていません。刹那の攻勢が激しかったので、制服はぼろぼろ、身体は治癒しましたが、痛みも残っています。

「紛らわしい言い方をしないで下さい、華琳さん」
「刹那に攻められたから、まだ胸とか痛いんだけど……」

昨日の刹那の攻撃を非難するために、わざと言葉を口にする。別に身体中が痛いので限定する必要は無いのです。胸の先が痛くないわけではないですし。

「うっ、すいません……」
「まぁ、それが理由で着いてきてもらってるし文句は言わないよ?でもね、もう少し加減を覚えてくれないと、危うく逝ってしまうところだったのよ?」

私の一言に、亜子と裕奈が顔を赤くする。……あぁ、そうでしたね。まだ勘違いを解いてませんでした。……面白いから、放っておきますけれど。

「とっ、取り敢えず!早く、服を選んじゃおうよ!」
「そうやな!カラオケとかも行きたいし!」

この話を早く終了したいと思われる亜子と裕奈にせかされて、私と刹那は話題を終了させる。何故か積極的に腕を絡めてくる亜子と裕奈に疑問を持ちながらも、今日は私の服を選んでくれるらしいので、特に何も言わず、喧騒の中へと足を踏み入れることになりました。


それにしても、都会の女性服売り場には凄い量の衣服が置いてあるんですね。ここまで置いてあると、どれを買って良いのか、悩むところです。

「この服なんてどう?」
「……すごいスカートの丈が短いんだけど……?」

裕奈の持ってきたスカートを試着室で着てみると、あまりにもスカートが短いことにびっくりする。だって、これ、パンツ見えますよね、絶対。
パンツだから、見られたら恥ずかしいですよ、勿論。

「ちょっと、裕奈……?そんなに凝視しないで欲しいんだけど……?」

いくら私でも、パンツが見えてしまうスカートを穿いていたら恥ずかしいわけで、スカートを手で押さえてパンツが見えないようにしないと……。
普段がメイド服ですし、こう、ちらちら見えるのは恥ずかしいのです。
微妙に隠れているのに、見えてしまうから、だと思いますが……。

「ふーん、華琳も恥ずかしがるんだね。……華琳、もっと私に恥ずかしがる姿を見せて?」
「ちょっと、裕奈……?」

豹変でもしたかのように、怪しい光を灯した瞳で私のことを見てくる裕奈。……裕奈はノーマルであったと記憶しているんですけれども……?
それにしても、服が違うと勝手が違いますね。普段の私なら、この程度で動揺することも無いのですが……。

「ほら、隠したら駄目だよ?よく見えないじゃない……」
「裕奈……?ちょっと、駄目だってば……!」

私の言葉を聞いているのかいないのか、スカートを押さえている私の手を、スカートから離そうとしてくる裕奈。裕奈って、こんな行動する娘じゃないんですけど……。

「裕奈!ウチの華琳に何やってるん!?」
「げっ、亜子!?」

いやいや、いつから私は亜子のものになったんですか?裕奈といい、亜子といい、ちょっと豹変ぶりが尋常では無いんですが……?

「亜子……その、手に持っている物は?」
「鞭!」

流石は都会のデパート……何でも売っているんですね。鞭まで売っているなんて、予想以上です……。しかし、亜子がそれを持っている理由が分からないんですが……。

「それを何に使うのよ?」
「これでウチを叩いて!」
「冗談にしては笑えないから、戻してきなさい」

やはり、裕奈と亜子は今日はどこか変です。何というか、普段の瑞葉が二人に増えたみたいですね……。
そもそも、この二人が私を(Love的な意味で)好きであるという情報は持っていませんし、そのような片鱗を見せたこともありません。それに、あまりにも積極的すぎますし。
こういう場合は、同業者に意見を求めた方がいいと思いますし、刹那に尋ねてみましょう。

「……華琳さん、魔力が漏れています。そろそろ、私も限界なんですが……」
「魔力……私から漏れている?」
「惚れ薬の類ですね。それが……華琳さんから漏れています」

私の質問に答えてすぐに、刹那の瞳に妙な光が灯ります。確かに、これは惚れ薬に罹った人の眼ですが……。私はそれを使用した覚えはありません。
しかし、確かに私から魔力が微妙に漏れていることには気がつきました。
……成程、この漏れ出した魔力が豹変の原因ということですか。

「さて、これで落ち着くはずなんだけど?」
「華琳……?」
「ウチらは、何をしてたん……?」
「はい、目が覚めたなら離れなさい?いつまで私のスカートを掴んでいるつもり?」

私のスカートを掴んだままの状態の裕奈と亜子に少し怒りながら注意をする。しかし、私の魔力に中てられただけで、こう豹変するものでしょうか……?
取り敢えず、裕奈と亜子に勧められた服を四着ほど購入し、そのデパートを後にすることにしました。


―東京都・某所のカラオケ店―

私達は、ある生徒を修学旅行に行かせるための人形や、武器の新調のためのナイフなどを購入している途中で、クラスメートでもあるチアリーディングの三人組と合流し、何故か木乃香とネギ先生の後を追い回すメンバーに加わったり、委員長と明日菜が合流したり、気がついたら刹那がいなかったりなどして、現在カラオケに連行されています。
メンバーは、明日菜、木乃香、ネギ先生、委員長、桜子、美砂、円、裕奈、亜子、私。ネギ先生と私はカラオケを初体験するわけでして……。

「裕奈……、何を歌えば良いの?」
「カラオケは初めてで良く分かりませんね……」

私とネギ先生は初カラオケに悪戦苦闘です。そもそもですね、曲が分かりません。
お嬢様も私も、大衆芸能には全く興味がありませんから、明日菜や委員長が歌う曲も一極も分かりません。

「いや、知ってる曲を入れれば良いんじゃないの?」
「……分かったわ」

取り敢えず、知っている曲を入れれば良いといわれたので、お嬢様が見ていたアニメ『撲殺天使ド○ロちゃん』でも歌うことにしましょうか。

「撲殺天使〜♪ 血しぶきドクドク ド○ロちゃん〜♪ 踏んで縛って叩いて〜♪ 蹴ってじらして吊るして〜♪ でもそれってボクの「愛」なの〜♪」

「うん、華琳ちゃんらしい曲だね……」
「アニメの曲……?」
「……愛なんかぁ」
「いや、確かに上手なんだけどね……」

裕奈の言う通りに知っている曲を歌ってみたのですが……反応が芳しくありません。おかしいですね、お嬢様は非常に喜んでくださるんですが……。

「裕奈、反応が芳しくない……っていうか、微妙にひかれてない?」
「いや、うん……どうしてそんな濃いアニメの曲……?」
「……お嬢様の趣味だけど?」

成程、一般受けするかといわれたら微妙だということですか……。しかし、私はお嬢様の興味のあるジャンル以外をカバーするつもりはありません。
今度は、秋葉原という場所でCDを買ってこなければいけないんですから!
そんな矢先、木乃香が私に一緒に歌うように提案する。

「華琳、この曲歌える〜?」
「どれ、木乃香……?うーと……聖少○領域ね、OK」

木乃香が歌おうと提案してきたのは、ローゼ○メイデンの曲。このアニメも、お嬢様はなかなかに気にいられましたので、私も練習をしている曲です。
まさか、木乃香がそのアニメを知っているとは思いませんでしたが。

「まだ触れないで〜その慄える指先は〜♪ 花盗人の甘い躊躇い〜♪」
「触れてもいい〜この深い胸の奥にまで〜♪ 届く自信があるのならば〜♪」
「「白馬の王子様なんて〜信じてるわけじゃない〜♪」」

木乃香の声は良く通るし、私もそこその通る声を持っているので、二人で歌えば勿論上手く歌えるわけです。……成程、自分の歌える曲を歌ってストレスなどを発散していけば良いのですね。

「お上手ですわ、お二人とも!」
「うん、聞き惚れちゃった!」
「は〜、華琳……凄いわ〜……」

口々に賞賛の言葉を受けた後、お嬢様の好きなアニメやゲームの曲を歌い、三時間ほどカラオケを楽しんだ私達は、女子寮を目指して店を出るわけですが……。

「支払いは……学園長につけておこうか」
「いえ、ここは私が払いますわ」

学園長から渡された、『支度準備金』で払おうかと思ったのですが、委員長が払ってくれるそうなので、それに従いました。
何でも、今日は明日菜の誕生日だから、だそうですね。
……今度、明日菜には何か作ってあげるとしましょう。



―後書き―

今年もクリスマスは中止になりました、ルミナスです。

今回は、原作の27時間目をモデルにした話になります。華琳は歌が上手いです。……アニソンとゲームの曲限定で。エヴァがやっているものや、ハルナに貸してもらったものが歌えます。
この時代にまだこのアニメがやっていないかも……。まぁ、大丈夫でしょう。
木乃香がアニソンを知っているのは、ハルナのせいです。きっと。

華琳の魔力は、他の魔法使いとは違います。だからこそ、惚れ薬みたいな感じなんですがね……。亜子はレジストできたんだろうか……。

今回は、話も後書きも短めですが……。
ではでは〜。

〈続く〉

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