『魔法都市麻帆良』
The 9th Story/期末テスト騒動/前編



アルベルトが2−Aの面々と会い
その内の2人との戦闘行為を行なってから約1週間後……


麻帆良学園職員室


時刻は昼半ば
アルベルトはノイン作の弁当を食し、午前中に行なった小テストの採点している
ちなみに竜帝は無く、白い手袋をした通常義腕があるがアルベルトはそれを紙の押さえ以外に用いず
左手だけでペンを操っている

「―――ふむ、超、葉加瀬、雪広、宮崎は問題無し――だな、むしろその知力を昔の俺に寄越せ…………と
 朝倉、近衛、那波も十分――か、この水準を維持するように…………と」

ちなみに言葉の後半は返却するプリントに書きこまれている
アルベルトは数分程かけてほとんどの面々の採点を終え
残りの10枚程度を採点しだす

「釘宮……もう少し努力するように、再テスト…………と
 エヴァンジェリン……やる気を出せ、再テスト…………と
 桜咲……剣道に打ち込むのも構わんがもう少し勉強しろ、再テスト…………と」
 絡繰……数学は問題無いが語学系統がマイナス点、再テスト…………と
 レイニーディ……もっと勉強するように、以下略…………と」

すでに何枚かのプリントが入っている『要再テスト』と書かれたファイルにその5枚を入れ
残りの5枚を手に取り、覗き込むと

「―――む?」

一枚目を見た所で何故か首を捻り
プリントから視線を外して目頭を抓む

「―――いかんな、目が疲れたか?
 …………――――ふむ、では………………」

少ししてから手を外し再度プリントを見る

「………………………いかんな、真昼間から幻覚のようだ
 成程……異常なまでに予想以上なものがが見えるわけだな?」

そう呟いて再び視線を外そうとするアルベルト
その背後から声を掛ける人影がある

「…………現実逃避はやめたほうが良いですよ?」
「―――む?」

声の聞こえた方へアルベルトが視線を向けると
そこには女性用のスーツに身を包み、訝しげな表情をした白い髪の女性が立っていた
アルベルトはその女性に軽く頭を下げると

「―――確か葛葉(かつらば)刀子教諭だったか、――何か?」
「…………私の苗字は葛葉(くずのは)です」
「ああ、それは失礼」

アルベルトがもう一度頭を下げると
葛葉刀子と呼ばれた女性は怪訝そうな表情を隠しもせずにアルベルトの手元へ視線を向けると

「それで、さっきから何現実逃避しているのですか?」
「現実逃避とは?」

真顔で首を捻るアルベルトに刀子は半目を向けると

「――『幻覚か?』――と言っていたでしょう?」
「誰がいつそんな愚かな台詞を? 微塵も記憶に無いが」
「ワザとらしく嘘をつくのはやめなさい!」

白々しい笑顔で言ったアルベルトに怒鳴る刀子
対するアルベルトはやれやれといわんばかりに肩をすくめると
手に持った5枚のプリントを刀子に差し出し

「しかし葛葉教諭、これを見れば現実逃避の1つや2つや10や20は当然だと思うのだが?」
「それはいくらなんでも多すぎです、―――何々…………はぁ?」

差し出された5枚のプリントを覗き込むなり間の抜けた声を上げる刀子
アルベルトは刀子の手からプリントを取ると、これまでと同じように書き込みだす

「綾瀬……、……勉強が嫌いなのは仕方ない、しかし最低限の点は取れ、再テスト&居残り…………と
 古菲……、……少し鍛錬の時間を勉強に廻せ、再テスト&居残り…………と
 長瀬……、……土日に山に行く余裕があるのなら勉強しろたわけ、再テスト&居残り…………と
 佐々木……、……死ぬほど頑張れ、再テスト&居残り…………と
 神楽坂……、……1度本当に死ね、再テスト「ちょ――ちょっと待ちなさい!」……何か?」
「流石にそれは危ないですからおやめなさい!」
「20点満点の小テストで平均2点と言う極酷点を取れられればこういう気分にもなるのだが……」

流石に危ないと感じた刀子が慌てて止めると
アルベルトはやや不服そうな表情で書き直す

「――では
 神楽坂……、本気で頑張らんと死なす、再テスト&居残り
 ―――と、言う事でいいか?」
「それでも駄目なような気もしますが…………
 この点数では仕方ありませんか」
「だろう?」

呆れたように呟く刀子と重々しく頷くアルベルト
何故か血文字風に
『居残り必須いっそ死ぬか?』と書かれたファイルに5枚のプリントを収め

「―――では午後の授業があるので失礼する」
「……あ、はい」

未だに少々呆けていた刀子に一礼すると
ファイルの群を手に持ち、立ち上がって職員室から出て行く


数分後、廊下


アルベルトが廊下を歩きながら左右の教室を見渡すと
どの教室でも期末テスト前の勉強をする生徒で溢れている

「うむ、良い雰囲気だ
 ――御山での修行を思い出すな」

7〜8年ほど前の己の修行場を思い出しながら頷いていると
自分の進む方向に見知った影が見える

「椎名に明石……それにネギ先生に源先生か」
「あ、アルベルト先生」
「こんちわー」
「ああ、――しかしどうした?そろそろ午後の授業だぞ?
 それとネギ先生、前回の小テストの答案だ」

挨拶してくる少女2人に応えながらも、手に持ったファイルの束をネギに渡す

「あ、どうもありがとうございます
 すいませんいつも採点とか代わってもらっちゃて」
「かまわん、それと一体何があった?」
「あ、そうでした」

ネギは手に持った手紙のような物を差し出すと

「僕が正式な先生になるための試験の内容が書いてあるそうなんですよー」
「――ふむ、ならばさっさと開けるのが良いだろう
 ―――源先生?」

桜子と裕奈を見ながらしずなに問うと
しずなは構わないとばかりに頷く

「―――構わないそうだ、開けて見ろ」
「あ、はい!」

ネギが封筒の封を開け
中に入っていた紙片を開くと
背後から覗き込んでいたアルベルトは小声で内容を読む

「何々?
『ネギ君へ
 次の期末試験で2−Aが最下位脱出できたら
 正式な先生にしてあげる』だと?
 ―――無理だな、諦めろネギ先生」
「い、いきなりそれですかー!?しかも即答!?
 ―――だ、大丈夫ですよ!何とかなりますよ!」
「―――生憎俺は君ほど楽天的にはなれなくてな、――さて」

アルベルトは懐に手を突っ込み怪しげなリモコンを取り出すと
その中のボタンの一つを躊躇無く押す

「……―――っ!! ふおおおおっ!!!???」

それと同時に学園長室の方から悲鳴と爆音が聞こえたがアルベルトは無視した
それまで2人の様子を見ていた裕奈と桜子が顔をやや青くして問う

「せ、先生?」
「今何を……?」
「知らん」
「で、でも……「知らん」」
「そ、そうは言ってもさー「知らん」うう……」

アルベルトは2人を視線で黙らせ、唐突にネギの方へ向き直ると

「さてネギ先生」
「は、はい!?」
「確か午後最初の授業は先生の英語だったな?」
「―――あ、はい!」

アルベルトの視線を見てしまったのか少々ビクついていたネギだったが
その言葉を聞いてかなり元気に頷き、それを見たアルベルトは表情を元に戻しつつ言う

「やり方は先生に任せる、勉強会と行こう」
「わ、わかりましたー!」
「うむ、では行くぞ椎名、明石」
「あ、はい!」
「わかりましたー!」

3人が頷くのを確認すると
しずなに別れを告げ、教室へ向かって行く


約10分後、2−A教室


「皆さん何かいい案はありませんかー?」
「はーい!『英単語野球拳』がいいと思いまー……「却下だ阿呆」――うきゃ!?」

開始早々手を上げて変な事を言った桜子だが
その頭に突如天井から落ちたたらいが命中、盛大に音を立てる

「――――〜〜〜〜!!!!」
「「「「「…………」」」」」

頭を抑えながら机に突っ伏して悶絶する桜子を同情の視線で見る他の面々
そこに心持ち楽しそうな雰囲気を持ったアルベルトが声を掛ける

「―――さて、椎名と同じ目にあわない自身がある奴から手を上げてみろ
 まあ、内容次第では遠慮なく同じ目にあってもらうが」

それだけ言ってリモコンをちらつかせると全員が黙り、手も挙がらなくなる
その様子を見たアルベルトは不服そうに首を振ると

「―――根性無し共め、実につまらんな
 では普通にやるとしようか、―――ネギ先生」
「あ、はい!では皆さん教科書の――――」

その後授業は滞り無く進んだ(何人かがアルベルトを恐怖の視線で見ていたが)


放課後


「あー、用紙に再テストと書かれている面子、明後日やるから勉強しておけ」
「「「「はーい」」」」

アルベルトの声を聞いた何人かが手を上げつつ頷く

「それと居残り連中は今日…………逃げるな馬鹿者!」

居残りと聞いた瞬間逃げようとした明日菜、まき絵、古菲(楓と夕映は逃げていない)
アルベルトはその後姿に軽く怒鳴りつつ教卓の下からバレーボールを取り出し

「――ふんっ!」
「「「――のわっ!!?」」」
「――そらっ!」
「「「――――うぎゃっ!?」」」

ボールが命中して3人が怯んだ瞬間、アルベルトは足で床を強く突き
その瞬間またもやたらいが落ちてきて3人の頭に激突する
アルベルトは倒れた3人を教室に引き摺り戻すと
頭を抑えながら起き上がる3人に半目を向けつつ言う

「―――安心しろ、居残りの監督は俺で無くネギ先生だ
 さほど長くしないようにも言ってあるから安心しろ……って何故に残念そうなんだ長瀬と綾瀬」
「何でもないです(こないだの本の事でも教えてもらいたかったのですが)」
「ござ(色々聞きたいことがあったんでござるが)」

2人の内心を知る余地も無いアルベルトは訳がわからん、とばかりに首を捻ると

「―――では、ちゃんと勉強してから帰る事だな」

とだけ告げ、部屋から去って行く


夜、麻帆良学園内世界樹広場前


既に夜の帳は降り
街灯の灯りのみがぼんやりと広場を照らす中
シスター服に身を包んだ3つの人影が不思議そうに周りを見渡していた

「―――おかしいっスねー…………侵入者、居ないっすよ?(ま、楽できていいっスけど)」

内心と外面が全く合わない言動をしているのは
2−Aメンバーの1人でもある少女『春日美空』

「シスター・美空、何か余計な事を考えていませんか?」
「え!?やだな〜シスターシャークティ、そんな訳無いじゃないっすか〜」
「ミソラ、目が泳いでル」
「ココネ〜〜!何でそういうこと言うかなぁっ〜!」

美空の内心にツッコミを入れるのはシスター服のフードの間から見える金髪が目立つ褐色肌の女性と
同じく褐色肌だが外見は小学生ほどの黒髪の少女
女性の言葉にたじろいだ美空の誤魔化しを斬って捨てた少女に美空が叫ぶ
その光景を微妙な半目で見ていた女性は軽くため息をつくと

「―――まあ、確かに美空の言う通りです
 結界に反応があった位置から考えれば間違い無くここを通るはずなのですが……」
「誰も居なイ、……ついでに気配もしなイ」
「そーなの?」
「ソウ」

そう問うてくる美空にココネは頷く
この少女の気配探知能力は中々の物、そう言うのなら間違いないのだろう

「…………やはり誤報だったのでしょうか?」
「そーじゃないっすかー?」

やる気無さげに言った美空にシャークティの冷たい視線が突き刺さり
美空は冷汗を垂らしつつ思わずたじろぐ

「う……」
「……まあ良いです、……ココネ、本当に気配はしないのですか?」
「ちょっと待っテ…………―――!! 誰か来タ!」
「「!!」」

慌てて2人がココネが見ている方向……世界樹の近くの林に目を向ける
良く目を凝らすと、木の影から歩いてくる人影がある

「……侵入者ですか……!」
「あー、私戦力としては役に立たないんで帰っても……「駄目です」……はい」

そんな漫才じみた会話をしているうちに人影の姿が灯りの下に現れる
それは……

「―――む?」
「「あ」」
「?」

それは一週間前に美空のクラスの副担任となり
シャークティも一度だけ顔をあわせた人物……

「……春日、試験一週間前を切っているのに夜遊びとは関心せんな?」

右腕を竜帝に換装し、その巨大義腕で何やら妙に長いロープを引きずり
やや疲れたような視線で美空を見るアルベルトが立っていた

「アルベルト先生!?何で居るっすか!?ていうか夜遊びじゃないっすよ!」
「そうか?―――まあいい、結界周辺に仕掛けておいた罠に反応があったのでな
 確認に来たらこいつ等がかかっていた」

右腕の義腕に持っていた縄を引くと
10mほど後ろにあった何かが引き摺られて来る
それは何故か簀巻きにされた全身傷だらけの男×2
予想外の光景に3人が固まるのをアルベルトは無視して話し出す

「関西の術者だそうだ、念入りに嫌がらせ……もとい尋問しておいた
 何かする気などもう起こさんというより起こせんだろうが気をつけて頂きたい
 ああ、これに尋問の結果知った情報を記しておいたので検分を頼む」

簀巻きのまま何やら虚ろな表情で乾いた笑いを繰り返す2人の男をシャークティの足元まで転がすと
手に持っていたメモをシャークティに手渡す

「では他の場所を確認せねばいかんのでな、――失礼する」

それだけ言ってから軽く手を振りつつ再び歩き出す
後には絶句するシスター服の3人組と
額に何故か「まけいぬ」とマジックで書かれた傷だらけの男2人が残された

「「「………………」」」
「「ハ、ハ、――アハハハハハハハハ………………」」
「……どーするんすか?これ」
「………知りません」
「…………何されたらこーなるんですか?これ」
「……………知りません…………」
「…………あのヒト、……何モノ………?」

最後にボソリと呟かれたココネの台詞が空しく空に消えた……


約一時間後、麻帆良学園女子中等部女子寮警備員宅


他に罠にかかっていた侵入者(5〜6人ほど)を警備中の魔法先生や生徒達に引渡し
家に戻ってきたアルベルトはノインが作った食事を食べつつ、ふと自分の義腕に目をやる

「……どうされましたアルベルト様?」
「いや、今竜帝が妙な振動を起こした様な気がしたが……」
「―――そうですか、―――……周囲に別段危険な気配はありませんが……」
「いや、分かっている、おそらく気のせいだろうな」
「そうですか、――――……勝手な妄想で物を言うのはお控えくださいと進言してもよろしいでしょうか」
「やかましい」




そして夜はふけて行く
翌日、これまでで一番厄介な事が起こるとも知らずに……
まだまだ続く物語

これからもお楽しみあれ




9th Story後書き

はい、『魔法都市麻帆良』9thStory更新しました
侵入者に対する嫌がらせはバカレンジャーのテスト結果の憂さ晴らしです
アルベルトはあれで仕事には真面目な性分なので2−Aの面々には結構ストレス食らってます
あ、ちなみに額に落書きをされたのは最初の2人だけです(どうでもいい)

これからもよろしくお願いします

それでは

〈続く〉

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