『魔法都市麻帆良』
The 3rd Story/先たる来訪者



2人の来訪者を含む4人が森を発って約20分後

麻帆良学園学園長室の西洋風の大きな扉の前に立つ4つの人影がある
それは黒マント、軍服、そして侍女服×2と言う妙に奇態な風体の4人組
その内の1人、黒いマントに身を包んだ金髪の少女がやや面倒そうに口を開く

「―――さて、ここにジジイが居る、…………まあ、タカミチ辺りも居るだろうがな」
「タカミチ?」
「中に入れば分かる」

それだけ言うとエヴァンジェリンは扉に近づき……

「入るぞジジイ!」

ノックも無しにドアを開け放つ
部屋の奥の机には長い顎鬚を垂らした1人の老人が座り
机の傍らには眼鏡をかけたスーツ姿の男性が立っている

「―――部屋に入る方法としてそれは正しいのか貴様」
「いつもの事ですのでお気になさらないほうが」
「あれがいつもの事になると言うだけで十分以上に問題があると判断しますがどうでしょうか?」

アルベルトの疑問に茶々丸が答え、それにノインがつっこんでいる間
エヴァンジェリンがジジイと呼んだ人物と思わしき老人が声を発す

「フォッフォッフォッ、ごくろうじゃったのエヴァンジェリン
 して、その2人が先ほど連絡で有った人物かの?」
「ああ、そうさ」

エヴァンジェリンに続いて中に入ったアルベルトが2人に一礼し、口を開く

「夜分遅くに迷惑をかけてすまない、俺の名はアルベルト・シュバイツァーと言う
 こっちは俺の侍女の……」
「ベルマルク・ノインツェーンと申します」

続けてアルベルトがノインを指し
ノインも一礼してから応える
それを見た老人はフォフォフォと楽しげに笑い

「フォッフォッフォッ、ワシは近衛近右衛門、この学園都市…………麻帆良学園の学園長をしておる
 こっちはこの学園の教師の1人で広域指導員の……」
「高畑.T.タカミチ、よろしく頼むよ」

老人の声に傍らに居た眼鏡の男性が軽く手を上げて挨拶する

「(ふむ、かなりの実力だな……、拳王位級に迫る実力があると見たが……
 しかしあの老人の頭は何だ?新手の異族だろうか……?いやあんな頭と同列に扱われたら異族連中の方が怒り出しそうだな……)」

アルベルトが怪訝そうな視線を近右衛門に向けていると
何を思われているのか大体察しているらしく、漫画汗を浮かべた近右衛門が言う

「あ〜、何を考えているのか分からんでもないがのぅ、先行予約で言っとくがワシは人間じゃぞ?」
「ははは、嘘を付かないで頂きたいこの人外頭蓋骨と丁寧に罵倒してもよろしいだろうか?」
「ははは、君の気持ちも分からないでもないけど学園長は人間だよ?」

その言葉にアルベルトは軽い驚きの表情を作るとタカミチのほうへ視線を移し

「ほう、そうなのか、―――ふむ、確かタカミチだったか?貴方が言うならそうなのだろう」
「2人とも地味に酷いのう……、というかワシは学園長でタカミチ君より偉いのじゃが……」

ジト目で睨む学園長を2人は無視し、タカミチが口を開く

「大体の事情は茶々丸君の通信で分かっている、だけど1つ聞きたい事が有るんだけどいいかい?」
「ああ、世話になるかもしれんからな、答えられる範囲で良ければ答えよう」
「ありがとう、では聞かせてもらおうかな」

タカミチは頷き、その表情を真面目ものへ変えると

「君達は――……一体どうやってこの世界に来たんだい?」

タカミチのある意味簡潔な問いにアルベルトは数瞬思考し
何でもないような表情で答える

「ふむ……―――空間転移の実験事故に巻き込まれた、と言えば良いのだろうな」
「え……?」
「何……?」
「ほ……」
「……?」

予想だにしない答えにノインを除く4人が絶句する
その反応を無視し、アルベルトは再度声を放つ

「―――ふむ、その反応を見る限り空間転移に関しては俺の世界の方が数段進んでいるようだな」
「そのようだと判断します」
「いやちょっと待て!貴様のいた世界では空間転移なんて物ができるほどの技術を持っているのか!?」

いち早く再起動したエヴァンジェリンが喰らいついてくるが
アルベルトは彼女を竜帝で押し止め、軽く苦笑すると

「事故だと言ったろう?――生憎実用化するには不安定すぎてな」
「そ、そうなのか……?」

まだまだ疑問の残る表情を見せつつ仕方なさそうに引き下がるエヴァンジェリン
しかし、アルベルトは彼女達にとってさらに衝撃的な言葉を放つ

「―――まあ、実用化に至っていないのはあくまで次元単位での空間転移だがな
 ――それも実験用の紋章が緑獅子・改にも積まれているしな」
「はい、――ですが流体すらないこの世界で使えるかどうかは不明だと判断します」

再度衝撃的な言葉を聞いて思考停止する面々
そんな皆を無視してアルベルトとノインは会話を重ねる

「そう、―――それが問題だな……
 流体さえあれば最悪を覚悟で転移を行うこともできるのだが……」
「成功率は限りなく低いと判断します、なお、私のアレを使っても成功率の変化はあまり見込めません」
「そうか」
「―――一体どんな世界なんだ貴様の世界は…………」

驚きと呆れの感情を含ませて放たれるエヴァンジェリンの言葉にアルベルトは軽く頷くと

「ふむ、―――では俺の世界の事から話すとしようか」

そしてアルベルトは語りだす

それは壊れ続ける世界に業を煮やした誰かが作り上げた世界
その世界その物を構成する流体と遺伝詞
進化により生身の肉体さえ持つ事が可能な人形達
人とは違う容姿と力を持ち、されど人と共に生きる存在達
人を模した機械とそれを操る騎師達
そして独特の個性を持つ都市達

全ての存在は文字で表され、本の中で神や魔族や異族が生きる―――架空都市(エアリアルシティ)―倫敦

その名の通り風水の本場であり、天使と竜が天駆ける―――風水街都(チューンバストシティ)―香港

格闘ゲームに似た世界観を持ち、学生が殴り合っては笑い合う―――奏/騒楽都市(ノイズシティ)―OSAKA

最強の重騎師を有し、全ては文字として書かねば存在が許されない―――閉鎖都市(クローズドシティ)―巴里

雷神鳥の化身が護り、全てを絵で表す陽気で暢気な―――創雅都市(イメージシティ)―S.F.

星や風さえ意思を持ち、何もかもが起こり得て何もかも起こり得ない―――矛盾都市(ゼノンシティ)―TOKYO

12の亜神が治め、肉体や意思さえデータ化された―――電詞都市(ヴァーチャルシティ)―D.T.

人と共に在る機械、そして異族が住まう黒き森と北風の―――機甲都市(パンツァーポリス)―伯林

問われるままにアルベルトは語り続ける
時にはノインが補足を付け足し
アルベルトは最後に己が義腕の事を話す

「―――この義腕の名は“第五竜帝”と言ってな
 俺の世界における日本に8つ存在する竜の義腕の帝級、その1つだ」

その言葉にこれまでの話を黙って聞いていたエヴァンジェリンが軽く眉をしかめつつ言う

「―――その中の5番目と言う事か……
 しかし独逸出身の貴様が何故それを?」

その疑問を受けたアルベルトは笑みを苦笑へ変えると

「―――ふ、高校時代は日本の戦国都市――NAGOYAの総長連合、その総長を務めていてな
 総長就任の時に御山……、まあ総長連合の養成所だな、そこでこいつを貰ったのさ」

アルベルトが苦笑を浮かべながら竜帝を撫でると
竜帝も応じるように唸り声を上げる

「ほう―――」

それを見て興味深そうに頷く少女を見てアルベルトは軽く笑うと

「1つだけ注意しておくが…………こいつは僅かながら意思と呼べる物を持っていてな
 余計な事をしたらどうなるかわからんぞ?まあ、悪くてkm単位での消滅か」
「「「――――!」」」

何でもなさそうに放たれた言葉にノインと茶々丸を除いた3人が絶句する
アルベルトはその様子を見て表情を苦笑に変えると

「―――安心しろ、そっちが余計な事をしなければ何もおきん」
「だけど……―――っ」

食い下がろうとするタカミチを手で制し
アルベルトはこれまでとは違う強い視線を向け、静かに言葉を紡ぐ

「生憎だが―――、そう簡単に暴走するようなら俺はとっくに死んでいる
 それに、…………同じ過ちを2度繰り返すつもりは無い」

静かな口調とは裏腹に目に込められた力は強い
タカミチにとって納得いかない部分もあるが、それでも黙らざるをえない力がアルベルトの目にはあった
アルベルトは黙りこくってしまったタカミチを見て軽く肩をすくめつつ視線を戻し

「―――さて、俺の世界の話はこんな物だな
 さらに細かい事が聞きたければそれは後で話そう」

アルベルトがそう言って話を終えると
それまで黙っていた近右衛門が口を開く

「では、今度はこちらの世界の事を話そうかの?」
「ああ、頼む」
「よろしくお願いいたします」

近右衛門は2人の言葉を聞いて頷き、話し出す
そしてアルベルトとノインは知る
魔法と呼ばれる神秘の事
立派な魔法使いと呼ばれるその神秘を扱う者達の事
過去に起きた大きな戦い
そしてそれを終結させたサウザントマスターと呼ばれる魔法使いとその仲間の事

「さて、次は――――……ん?どうしたのかの?」

それらを話し終えて次に神秘の秘匿について話そうとした近右衛門だが
アルベルトの表情が判断のつき辛い
強いて言えば嫌悪の表情へ近い物へ変わっているのが目に付き、話をやめて問う
アルベルトはその問いに軽く首を振ると

「―――いや、何でもない、続けてくれ」
「…………そうかのぅ?――まあええわい
 ワシから言う事は後1つだけじゃ、――魔法の類は秘匿される物でのう、一般の人々にはばれんようにしとくれ
 無論君の使う神器とやらも同様じゃ、何も無い空間からいきなり風や雷が発生したら色々と困るでの」
「―――ああ、わかった」

なお、これはアルベルトが神器と呼ばれる音楽の説明をしている時に判明した事であるが
神器は本来大気中の流体に作用する事で風や水や雷を作り出す音楽である
どうやらこの世界では竜帝を介し、魔力を変換する事で使えるらしいと言う事
ちなみにアルベルトは、風を操る高ランク神器の風神神器をメインで扱っている
他にも何種類か所持はしているのだが、あくまで所持しているだけであり
自在に扱う事ができないのが難であると言えるだろう

なお、神器のランクは3段階に分かれており
低ランクの王神器
中ランクの帝神器
そして高ランクの神神器である
そしてこれらの先に風や雷、火や水等の属性を表す文字を入れる事で区別する
例外と言える特殊な神器が他に幾つか存在するが今は関係ないので割愛する

―――アルベルト・風神技能・発動・風神発動・成功!

アルベルトが竜帝を撫でると
竜帝から緩やかなテンポの音楽が流れ出す
そして何気なく竜帝の拳を握ると
拳の周りに風が纏わりつき、踊るように舞う

――そこで、いままで静かだったエヴァンジェリンが口を開き、近右衛門に問う

「―――ところでジジイ、こいつらをどうする気だ?
 “こちら”の事情を話したと言う事は雇うつもりなのだろうが……」
「そうですね、―――緑獅子・改と言う…………確か重騎と言う呼び名の兵器でしたか
 それを処遇も決めなければなりません」

エヴァンジェリンが半目を、タカミチが心配そう心配そうな視線を近右衛門に向けるが
向けられた近右衛門はのんきそうに笑うと

「フォッフォッフォッ、まあ緑獅子・改とやらの件は後で決めればいいじゃろ
 ―――ではアルベルト君」
「何だ?」



「――今、ワシは君を雇おうと思っとる
 現時点で君達をこの学園から出すわけにはいかんし
 かと言って何もさせずに置いておく余裕も無いしのう
 それで―――じゃ、何か得意分野はあるかね?」

近右衛門の言にアルベルトは顎に手を当て……

「―――ふむ、危険な物を野放しにするぐらいならば
 手元に置いておき、監視、もしくは飼い殺し……と言う事か
 …………フッ、飄々としてる割には中々老獪だな?」
「フォッフォッフォッ、まあそう言う事じゃ、気分を悪くしたのなら謝るぞい」
「いらん、俺が貴方の立場でもそうするからな、――それに本気で悪いとは思っていまい?
 ――しかし得意分野か…………、―――独逸語ぐらいしか教えられないが―――ぐおっ!?」

手厳しいのー、と言いながら笑う老人を横目で見つつ己の出身国の言語を挙げようとするが
開いた脇腹に突如百科事典が激突し、アルベルトは苦悶の表情で脇腹を押さえながら膝をつく

近右衛門、エヴァンジェリン、茶々丸、タカミチが本の飛んできた方向を見ると……
その視線を無視しつつノインが皆の前を素通りし、アルベルトの横に立つと

「―――アルベルト様、己の能力を過小評価しないで頂きたいと判断します
 元総長連合ならば日本の大学以上の学力はあると断定できます
 それを過小評価するとは……侍女である私に恥をかかせる気ですか
 …………―――聞いておられますかアルベルト様?」

左手で一冊の本を持ちつつ、未だに悶絶しているアルベルトへ説教を開始し始めた

「「「…………」」」

硬直する面々だが
その中で少々奇妙な動きをする者が居た

「………………」
「ちゃ……茶々丸?」

エヴァンジェリンの声も虚しく
何やら今の光景を記録していたらしい茶々丸がノインへ話しかける

「ノインさん、―――少しよろしいでしょうか?」
「茶々丸様――はい、構わないと判断します」
「ありがとうございます」
「――では向こうに参りましょう」

そのままそれぞれの主人を無視して部屋の隅へと行き
何故かヒソヒソと話し出す従者2人

「―――…やはり………従者と…………」
「いえ……――時には………態度を持って……」
「……成程…………しかしここでは…………」
「…………それも…………務めと………」
「……やはり………の………使用も…………?」
「………それも………私………判断………かと……」
「……加減…………制限は……?」
「…時には…行……必須…――」

なんとなく聞いてはいけない様な話し声を残りの3人は無視し
アルベルトが復活するのを気の毒そうに見守る

「…………むぅ…………」

アルベルトは脇腹を左手で押さえ
竜帝で身体を支えながら立ち上がる
顔を上げるとやや心配そうな表情の近右衛門が問う

「―――大丈夫かの?」
「何とかな……」
「あははは――……やっぱり百貨事典はイタイよねぇ……」
「タカミチ、……何かトラウマでもあるのかお前は…………?」

なにやら遠くを見ながら呟くタカミチと彼に半目を向けるエヴァンジェリン
とりあえずアルベルトは完全回復に数分を費やしたと記しておく

「―――ま、まあとりあえず、…………君の学力は大学以上と判断していいのかのう?」
「……あくまで俺の世界の学問だがな、こっちで通用するかは分からん」
「ノイン君が平然と本を読んでるあたり平気そうな気がするけどね」

タカミチの言葉にアルベルトは軽く頷き

「まあ、少なくとも基本的な学問は同等レベルなのだろうな
 ただ、俺の世界に魔法が無いのと、こっちの世界に流体や遺伝詞に関する技術が無いのが一番大きな違いか」
「ふむ…………」

アルベルトは少し考えると表情を締めると近右衛門に視線を向け、口を開く

「―――俺達をどうするかはそちらに任せる
 ただ、緑獅子・改についての処遇のみ俺が決めさせてもらえるか?」
「かまわんよ、どうせあれは君とノイン君しか扱いを知らんようじゃしのう」
「感謝する」

にこやかに告げる近右衛門に頭を下げるアルベルト
それを見た近右衛門は思案するように髭を撫で

「―――ふむ、では当面の間は警備員として……?
 ―――……いや、“彼”の補佐についてもらうかの」
「彼……ですか?」

近右衛門は疑問の言葉を上げるタカミチ見て頷くと

「そうじゃ、……“彼”の補佐ならば
 たとえ彼の世界の学問がこの世界の物とちごうても大丈夫じゃろう?」
「確かにそうですが……」

タカミチは何か言いたげに近右衛門を見るが……

「タカミチ君、君の言いたい事もまあわからんでもない
 しかし……じゃ、彼等なら信用できるとも思わんかの?」
「ええ、まあ……」

――これでも人を見る目は有るほうだと自認しているタカミチ
その自分から見ても、目の前の青年は決して悪い人物ではないと言う事は分かる
問題と言えば右腕となっている巨大な義腕程度だが
それも学園長が担当させようとしているクラスの面々ならば気にしないだろう
そう結論付けたタカミチは頷くと

「……わかりました、学園長がそう言うなら僕は何も言いませんよ
 ―――なので何かあった場合の責任は学園長が取ってください」
「その台詞を聞く限りでは地味にワシを信用しとらん気がするのぅ」
「気のせいですよ」

近右衛門はタカミチにジト目を向けるが無視され
仕方なさそうにアルベルトへ向き直ると

「―――と、言う訳で、君にはとあるクラスの副担任をして貰う事になったぞい
 やや特殊なクラスじゃが…………まあ君なら大丈夫じゃろう」
「俺をどう思っているのか小1時間問い質したい気分だが……まあいい、了解した」

アルベルトがやや嫌そうな表情で放った返答に
近右衛門はフォッフォッフォッと笑い

「では近い内に仕事の内容を教えるとするかの
 今日はもう遅いしのぅ……すまんがどこかのホテルにでも泊まってくれんか?
 宿泊代は渡すからの」
「……む……しかし……「待て」……?どうしたエヴァンジェリン」

アルベルトが何か言おうとすると
それまで静かだったエヴァンジェリンが割り込む

「貴様は私の家に来い、色々と詳しく聞きたい事があるのでな」
「―――(ああ、確か色々話す約束だったか)――俺は構わんぞ?」
「そうかの?ならば今日はエヴァンジェリンの家に泊まっとくれ」
「では行くぞ―――……っ!?――どうした茶々丸!?」

エヴァンジェリンの声の先では侍女服を着た少女2人が何故か油断無く学園長室の扉を睨みつけている
茶々丸は油断無く身構え、ノインに至っては先ほどの槍を引き抜いて構えている

「気をつけてくださいマスター、何者かが高速で近づいてきています」
「「「「!!」」」」

茶々丸の言葉にエヴァンジェリン以外の3人も弾かれた様に扉の方を見る

「―――誰だかわかるか?」
「――不明です、熱源反応を見るに人間サイズ、魔力反応はありません
 しかし移動速度は時速60kmを超えています」

アルベルトはエヴァンジェリンと同様に扉を睨みつけながら
近右衛門とタカミチに問う

「…………1つ聞くが、魔法と言う物でそう言った強化はできるのか?」
「そう言う魔法も有るには有るのじゃが……」
「魔法を使えば魔力反応は絶対に出るはずなんだ……それがないと言うことは」

タカミチの言葉を聞いたアルベルトはふむと唸ると顎に手を当て

「地力でその速度を出していると言う事になるな」
「そんな人間が………………」

そこまで言いかけたところで何かを思い出したのか急に黙るアルベルト
それを見た近右衛門は首を傾げると

「? ―――どうしたのかね?」
「…………いや、俺の世界にはそう言う事を軽々とやってのける連中が居てな」
「…………とことんぶっ飛んだ世界だな貴様の世界は……」
「何となくだが貴様には言われたくないぞエヴァンジェリン」

皆がそんな事を話している内に近づいて来たらしく
ドドドドと言う地響きまで響きだす
やがて音は部屋の前で止まり

「流体反応があったのははここか……――っ!?」

飛び込んできた人影目掛けてノインが槍の石突きの一撃を繰り出すが

「―――っ!」

その一撃は完全な不意打ちだったが
あろうことかその人物はとっさに床を蹴り横へ飛ぶことで避けた
だが、ノインの対応も尋常ではなかった

「―――」
「!?」

ノインは槍を手放して跳躍
横に飛んだその人物の懐に飛び込むと
瞬間的な動きで胸倉と片手を掴み取り

「―――ふっ!」
「へ……―――?」

鋭い気合の言葉と共に一本背負いの要領で投げ落とした

「―――ふぎゅ!?―――…………っ!?」

嫌な音と共に床に叩きつけられ、妙にくぐもった女の声が響くが
ノインはそこで許さず、関節を極めて完全に動きを封じる

「ふむ」
「「「「…………」」」」

あまりの事に停止するアルベルト以外の面々だが
その中でいち早く再起動したエヴァンジェリンがその女の顔を見ると
僅かに驚きの表情を浮かべて言う

「――………超鈴音?」
「何だ、知り合いか?」
「――同級生だ」
「ほう?」

2人の視線の先にはシニヨンと三つ編みを組み合わせた髪形をした中華風の少女『超鈴音』がノインに取り押さえられている
どうやら叩きつけられた時に打ったらしく、後頭部を極められていない方の手で押さえたまま叫んでいた

「し、絞まってる!絞まってるネ!手やら足やらが絞まってるネーー!!!」
「―――アルベルト様、どうされますか?
 不審人物ならば即時処分したほうがよろしいと進言します」

取り押さえて動きを封じている少女の叫びを無視し
それどころか物騒な提案をするノインをエヴァンジェリン達は引きつった表情で見るが
アルベルトはそれを無視して首を振ると

「いや、そいつはここにいる全員が知っているようだ
 処分はせずにこっちへ連れて来い」

こっちもこっちで物騒な事を言いつつ
ノインに超を連れて来るように言う

「承知いたしました」

ノインは頷き、そのまま超を肩に担ぐと
アルベルトの傍まで運んで床に下ろす

「う〜……――」
「俺の侍女がすまんな、―――大丈夫か?」
「な……何とかネ……」

超は相当の速度で叩きつけられた痛みに唸りつつも
差し出されたアルベルトの手を取り、一息に立ち上がる

「……うう……、………………っ!
 確かに流体の反応があったはずネ!?―――ってこの義腕は……確か竜帝!?なんでここに………
 ―――!! もしやとうとう救助が来たのかネ!?」

超は唐突に唸るのをやめ、弾かれたように左右を見回し
竜帝視界に入ったところで固まり、少ししてから凄まじい勢いで騒ぎ出す
なにやら興奮してらしく、止まる様子は全くない

「ふむ―――……とりあえず落ち着け貴様」

―――アルベルト・腕術/風神技能・重複発動・風圧打撃・成功!

「っ!?今のはぎのっ――――!!??」

竜帝の指から発せられた風圧の弾丸が額に直撃し
今度は額を押さえながら声も発せずに悶絶する超
――哀れである

「―――む?そう言えば竜帝を知っていたな……、誰だコイツは?」

額を押さえてしゃがみこむ超を頭を捻りながら見るアルベルトに茶々丸が答える

「―――超鈴音、私やマスターのクラスメイトの1人で、私の製作者の1人でもあります」
「ほお……、……―――ノイン、該当は?」

茶々丸の説明に納得したように頷くと
唐突に表情を締め、己の侍女に問う
ノインは周りの4人が眉をひそめるのを無視し……

「―――該当1件有り、超絶な身体能力、私の不意撃ちを避けるほどの身体能力と反応速度
 加えて茶々丸様ほどの自動人形を作り出す事が出来る事…………
 以上の事から、超様は万景街都(オールフォースシティ)――北京の出身である確立が高いと判断します」

再び4人が固まるのを見てアルベルトは少々困ったように告げる

「―――どうやらコイツは俺と同じ世界の出自らしいが…………どうするべきだと思う?」




役者は集っていく
異世界から来た青年と人形
そして、それより早くこの世界に迷い込んでいた少女
彼らがえがく物語とは?
まだ始まったばかりの物語

これからもお楽しみあれ




3rd Story後書き

どうも、「魔法都市麻帆良」第3話更新です
と、言う訳で都市世界版の超登場です
ちなみに私の書く超はネギ君と関係一切無しです
そして魔法も使えないのでスタイルとしては近接戦闘型ですね
詳しい戦闘スタイルが判明するのはかなり先になると思います

ちなみに作中の「万景街都(オールフォースシティ) 北京」は私のオリジナル都市です
では、これからも「魔法都市麻帆良」をよろしくお願いします

それでは


〈続く〉

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