※この話から、一部型月設定が入っていきます。
 そういったものが苦手な人は、ご注意ください。


ぼくの魔法 第三幕「泣き虫とギャグ補正」




 「何だお前、もう坊やに会ってきたのか」


開口一番、エヴァンジェリンはそんなことを口にした。

どうやら、何故かぼくがネギくんと知り合ったことを知っているらしい。

後ろで控えている茶々丸の機械的な眼差しが怖い。

ぼくの認識的には、茶々丸はロボットではなく一人の人間なのだが・・・。

それは今、語るべきことではないだろう。


 「あぁ、だからどうしたんだよ」

 「相変わらず貴様は私に対しての態度だけは厳しいんだな。少しばかり傷つくんだが」

 「嘘つくな。お前がぼくの言葉で傷つくはずがない。そんなこと、誰だって分かる」

 「人の気持ちとは常に変わり、形を移す。それを口にし、次は行動へ。
  哲学的なことではなくとも、それぐらいのことであれば誰であろうと理解できる」


相も変わらず、エヴァンジェリンは高圧的な態度でぼくを見下す。

当たり前のように、不思議がることを不思議がるように。

どうでもいいことのように。

ぼくを下に見る。

それは立場故なのか、それとも元々なのか。


 「それは私も同じだ。お前とて違うわけではない」

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 「ふん、まぁいい」


呆れるかのように、エヴァンジェリンは手に持っているティーカップを置いた。

中身は・・・既に、ほとんどない。

紅茶が好きなんだったっけか・・・?


 「あぁ、嗜む程度にはな」

 「・・・・・・容姿だけで判断したら、圧倒的に似合ってないはずなのに、似合っているように錯覚するのは何故だろうね」

 「少々失礼だな。茶々丸、こいつには珈琲で良い」

 「あ、いや。それぐらいは自分でやるよ」

 「今日はお疲れのようですから、お任せください」


即答でぼくの気遣い・・・というか常識の範囲内の行動を却下する茶々丸。

む・・・もう少しばかりそっちがゆっくりしていてほしいのだが。


 「・・・・・・それで、今日はどうしたんだ?」

 「エヴァ、あの子が君の求めているネギくんか」


ぴく、と途端に動きを一時停止するエヴァンジェリン。

こちらを確かめるように、しかし試すように見つめてくる。

不快ではあったが、まぁ気にしないでおこう。


 「・・・・・・あぁ、そうだ。それで、それがお前に何の関係があるんだ?」

 「ネギくんに、ぼくの正体がバレたかもしれない」

 「ほぅ、何故だ?」


ぼくは無言で、自分の右目を指差す。

そのまま位置をずらして、今度は左目の前へ。

それだけで意図が掴めたのか、エヴァンジェリンは愉快そうに笑った。


 「あぁ、なるほどな。馬鹿め。だから無用心に近づくなと言っただろう。
  それでこの前、ジジイ達を怯えさせたこと。未だ忘れてはいないんだろう?」

 「ぼくの所為じゃない」

 「あ? つまり、お前は向こうの認識能力が問題だと、そう言いたいのか?
  先に言っておこう。それはお前の大きな間違いだよ」

 「そもそも、こんなものこっちから願い下げだって言ってるだろ」

 「しつこいやつだな・・・それでそのフレーズ、何回目だ?
  十はとうに越している。しつこい男はモテないぞ?」

 「茶化すな」


はぁ、と自然に溜息が漏れていた。

何で自分はいつもこう、上手な会話ができないのだろう。

これでは、エヴァンジェリンにからかわれているだけじゃないか。


 「幻想殺し・・・いや、そんなものじゃない。次元が違う。
  お前は根本的なものを殺す。それは生きているものなら何でもだ」

 「こんなもの、ぼくには必要ない」

 「そういうな。制御の仕方を教えてやったのを忘れたか?」

 「あぁ、少なくとも。自殺だけはしなくなったね」


歪な世界は、とことん自分を嫌っているらしい。

あのまま、あの世界に居続けていたらと思うと。

ぞっとするどころではない。

冷や汗が止まらなくなる。


 「全く、とんでもスペックとは正にこのことだ」

 「・・・・・・前々からその台詞を聞くが、どうして出鱈目なんだ」

 「その・・・《直死の魔眼》。使いこなせればこれほど強く、脅威なものはない。
  だが、持っている人物はどうだ? こうして身体を鍛えてやっているとはいっても、魔力は零。
  《気》に頼るしかない現状だ」

 「だから・・・・・・」

 「戦わざるおえないよ、お前は」


そこまで言った辺りで、珈琲が届いた。

独特の匂いが、鼻腔を刺激する。

茶々丸の無表情が、今は助かる。


 「少なくとも、それを知って放っておく魔法使いは、存在しないな」

 「・・・・・・・・・・・・それは、」

 「私やジジイで、嫌というほどに思い知っているだろうに」


エヴァンジェリンは、あくまで淡々と。

こちらに同情なんか一切せず、言葉を発している。


 「ま、とはいえども」


再びエヴァはティーカップを手にとり、それを口に運ぶ。

優美という言葉が頭をよぎったが、放っておこう。

ぼくも茶々丸が淹れてくれた珈琲を口にする。

・・・・・・ぼくは正直、珈琲とか紅茶に詳しくはない、が。

なんとなく、優しい感じがした。


 「お前が悪いわけでも、私が悪いわけでも、ジジイが悪いわけでもない。
  迷惑かもしれんが、それが役に立つ時もあるさ」

 「納得がいかないな」

 「お前の気持ちは分からないから、私は何も言わんぞ」

 「あぁ、でも、あの時助けてくれたのはお前だ。だから、感謝してるよ、エヴァ」


死にかけたぼくを救ったのは、目の前の少女だ。

それは間違いない。

否定できるはずもない。


 「・・・・・・素でその言葉を吐くな。馬鹿者」

 「いや、本当だ。感謝してる。ぼくを救ってくれて、ありがとうエヴァンジェリン」

 「・・・・・・・・・う、煩い。この女顔めが」

 「中性的ってはよく言われるけどね」


言われた言葉を恥ずかしがっているのか、エヴァンジェリンの顔は少し赤い。

・・・・・・はっきり思ったことなんだけど。

いい歳して、この台詞を恥ずかしがらないでほしい。


 「氷爆」

 「あぶねぇ!?」


一瞬の内に、ぼくの視界が真っ白に染まった。

爆発するか、しないかの、正に刹那の間に。

ぼくは何とか転がるようにしてその攻撃を避ける。

緊急脱出という言葉を、ここまで必死に遂行したのは初めてだ。


 「てんめぇ! 殺すぞ!」

 「洒落にならないぞ!!」

 「逆ギレすんな!」


エヴァがいう子供と、自称大人の口論が続いたのは、何十分ほどだったのか。

茶々丸の笑顔だけで、全てチャラにしてやってもいいけどね。

癒されるなぁ・・・・・・。こっちに来てくれないかなぁ、茶々丸。


 「すみません、私にはマスターがいますので・・・」

 「なんなら妹に値する奴等を一体くれてやろうか?」

 「茶々丸じゃねぇと意味がねぇんだ、ロリババァ!!」

 「人が親切に提案してやったら・・・・・・おい!! 別荘こい!!」

 「あぁ、ついでに妹達見せろ!!」

 「せい!」


茶々丸のボディーブローを喰らったのは、初めてだった。

どごぉ、という嘘みたいな音が響く。

骨は・・・折れてはいないだろう。

でも、自然と膝をついた。


 「私じゃないとダメだと言っていた貴方は、何処へ行ったんですか」

 「ちゃ・・・茶々丸?」

 「其処に座りなさい、澪さん」


既に座っています。

・・・背の高い女性は、色々と圧倒されるなぁ。

ぼくは、正座で茶々丸に説教されている。


 「お、おい・・・茶々丸? そろそろいいぞ?」

 「マスター。マスターも同じですよ」

 「わ、私もか!?」

 「澪さんの魔力抵抗のなさは、マスターは私以上に把握しているでしょう?
  それなのに、いきなり氷爆。何か文句があれば氷爆。それは、あまりにも危険です」

 「茶々丸、この世には、シリアスの時以外には、あぁいうのは効かないんだよ」


エヴァが無茶苦茶なことを口走っている。

世に言うギャグ補正か?

一話の真剣さは何処に言ったんだ。

寝るぞーで終わる以上の急展開なんて、ぼくは認めないぞ。


 「本当ですか? では、私が今この場で澪さんに回し蹴りをしても効かないんですね?」

 「・・・・・・・・・あぁ、勿論だ!」


ぼくは、逃げ出した。






◇ ◆ ◇ ◆





 「くっそ・・・今日は踏んだり蹴ったりだ」


ネギくんに会えば、クラス中にからかわれ。

エヴァの家へ誘われてみれば、前半のシリアスをふっ飛ばしやがった。

ラブコメ漫画じゃないんだぞ! 

回し蹴りをしてこようとする茶々丸に、癒しはなかった。

今日は、きっと故障してたんだ、きっと。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・やぁ、澪くん」


唐突に、背後から声がした。

少しだけ、なんつーか、アレっぽい声。

とりあえず、日本語の完璧なイントネーションではない。

となれば答えは二択。

一択目は、いきなり飛び蹴りでくるだろうから・・・。


 「よう、超」

 「ありゃりゃ、バレちゃっていたカ」


恥ずかしそうに頭をかく超。

こいつとは、超包子で何度か話したことがある。

とりあえず、未来とか、そういう関係に憧れている乙女だってことは知っているが・・・。

如何せん、ぼくはぶっちゃけ興味がない。

この前も、過去が良い方向に変えられるならどうすると聞かれたことがある。

ぼくはその時、こう答えたんだったけか。


 「そりゃ、したほうがいいだろ。だって、良くなるんだぜ?」


・・・少々、無責任な言葉だったかもしれないが。


 「なぁ、超」

 「ん、何かナ? 澪くん」

 「この前さ、未来がどうとか言ってたじゃん?」

 「・・・・・・・・・うん、言ってたヨ」


唐突に、気になっただけだ。

別に、特に、理由があるわけでもない。

無駄な会話かもしれないしね。


 「過去を変えるって、どういうことなんかねぇ?」

 「・・・・・・・・・それは、未来人じゃないと分からないことなんじゃないかナ?」

 「アレだよ。よくあるだろ? 漫画とかで。未来では実は凄い凄惨なことが起きていて、それを防ぐために未来人がくる。
  それで、主人公達と一緒にその過去を修正するってやつ」

 「うん、あるネ」

 「アレってさ、すごく格好良くないか?」


ぼくは両手を広げる。

・・・やばい、今のぼくはちょっとだけテンションが上がってるぞ。

久しぶりだからなのか? こいつとそんな話をするのが。

最近、なんか話し合いってのをしたことがなかったからな。


 「ドラ○もんなんかでは、過去は変えちゃいけないって言われてる。それは、間違いなく正しいことだ。
  でもさ、そういうのって、なんつーか、理屈じゃないよな。
  助けたいから、変えたいから。だから、勇気を持って行動した。それって、すごいことだよねぇ」



 「覚悟がいるし、きっとそれは、その人にとってはものすごく辛いことなんだと思う。
  きっとココロの底では、諦めかけちゃったりするんだろうな。一人ですごく、辛いんだろうな。
  だからぼくは、そんな奴がいるなら会ってみたい。そして、協力してやりたいな」


ぶっちゃけトーク。

ぼくなら、そもそも今を変えたいということを思わない。

今を如何に楽に、かつ楽しく生きるか。

そんなことしか考えない、屑野郎だ。

だから、純粋に憧れる。

だから、尊敬する。

だから、手伝ってやりたい。

・・・・・魔法があるんだから、未来人だって、きっといるだろ。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・超?」


・・・・・・・・・この日、最大の不幸はこれだったのかもしれない。

これならまだ、これならまだ―――。

茶々丸にギャグ補正なんて通用しないって証明すればよかった!

そっちのほうが、大分マシだ!


超鈴音は、泣いていた。

ぽろぽろと涙を流していた。



 「え、えー・・・・・・」


いや、なんでだよ。

ぼくはお前が好きそうな話題を振ってあげただけじゃないか。

え、あ、いや。

なんでなんでなんで?

誰かー。早くぼくに三択の選択肢出してくれー。


 「なな、何で泣いてるんでしょうか、超さんは」

 「・・・・・・いや、なんでもないヨ。ただ、澪くんがドラえ○んの話をするから、ドラえ○ん六巻を思い出しただけ。
  本当に、ただそれだけなんだ」

 「六巻・・・アレか、未来へ帰っちゃう話か」

 「言った言葉と反対のことが起きる・・・うぅ」


よよよ、とそこに座り込み制服の袖で目元を隠す超。

馬鹿にしてるのか、こいつ?

心配して、損をしたのは初めてだ。


 「んだよ畜生。泣き真似か」

 「うん、でも。澪くんの意見にすごく勇気をもらえた。だから、感謝してるヨ?」

 「・・・・・・いや、なんでお前が勇気をもらうんだよ」

 「あはは、わたしはのび太くんだから、ドラえ○んがいないと未来へは行けないのサ」

 「・・・・・・ふーん」

 「実はわたしは、火星から来た人型ロボットなのだー!」

 「ぼくは茶々丸じゃねぇと認めないっつってんだろうがぁ!」

 「なにが!?」


・・・・・・話を戻そう。

未来から来るということは・・・。

つまりは。

つまりは、タイムマシン。

在るわけがない代物。

・・・それは、魔法のようなものだろうか?


 「・・・まるで魔法だ」

 「魔法なんて、この世にはないよ」


いや、あるんだが・・・。

まぁ、一般人である超に話しても仕方がないことでして。

ぼくはそれに、素直に賛同した。


 「でも、魔法なんてものが、この世にあるのなら・・・・・・」


超は最後に、ぼくにゆっくりと微笑みかけた。

ぼくはその言葉を、いつまでも忘れないだろう。

きっと、これからも。


 「皆が使って、皆で幸せになれれば、一番なのにネ・・・・・・・・・・・・」


あぁ、全くもって。




その通りだよ。



























アトガキ


・・・・・・うん、超のくだりは、書きたいこと書いただけな感じになっちゃいました。

個人的に、未来系の話題は大好物なんです。すいませんでしたぁ!

ちなみにこのあとエヴァ家に戻って、ギャグ補正はなかったんですねってオチつけようと思ったんですが・・・。

わざわざギャグに戻す必要もないかって思ってやめました。

それにしてもこの後宮・・・自分の意見しか語らない人間だ。


《直死の魔眼》・・・。ぶっちゃけると、直死の魔眼持ってる人間は、

ネギま世界でどんぐらい戦えるのかなぁって思ったのが、この作品の切欠なんですよね。

しかし、志貴も式も、ぶっちゃけ両方ネギま世界に持ってくるには無理があるし・・・(Fateなら遠坂印の宝石剣があるんですが)

あのゼルレッチが協力してくれるはずもありませんしね。


だから、一般人に持たせちゃいましたって感じです。

どのように死に、そして手に入れてしまったのかは、後の話で明かしたいと思います。


ではでは、意見、感想等、どしどしお願いします。

以上、幹でした。

これからも、拙作「ぼくの魔法」をよろしくお願いします。

〈続く〉

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