―――2003年3月15日 午後12:20 麻帆良学園女子中等部 屋上

「ええい!何故この私が雪広あやかなどに従わねばならんのだ!?」
「あの時の委員長は言霊でも使っていたのだろうか……」
「………データ上では雪広さんがそのような技能を扱えるとは記録されていません」
「純粋な迫力……とでも言うのか?」

昼休みの屋上で私と茶々丸、そして茶々丸が作った私の弁当を狙って付いて来た龍宮真名の3人で、先程の雪広あやかについて話し合っていた

「これからはあまり委員長の前で迂闊にネギ先生の事を喋らない方が良さそうだ」
「そうだな………っておい!それは私の玉子焼きだ!」
「マスター、まだこちらにあります」

む、残ってたか……しかし龍宮真名め、ここ最近殆ど毎日私の弁当を狙いに来おって
ジジイ相手に警備員の仕事で稼いでいるのだから、昼飯代くらい十分に有るはずだが………どうして私の所に来る?

「最近此花先生と茶々丸さんの食事を食べ続けたせいか、どうも舌が肥えてきてね………困ったものだよ」

私の考えを読んだのか、それともただの偶然かどうかは分からんが龍宮真名は私の疑問の答えを洩らしたが

「そんなもの私の知った事では無いっ!!…それよりもそんな理由で毎日私の弁当を盗み食いしてたのか!!」
「盗み食いとは人聞きの悪い……「ご相伴に預かってた」んだよ、エヴァンジェリン」
「私は許した覚えは無いんだがなぁ!!」
「真祖の吸血鬼ともあろう者がそんな器の小さい事を言うものではないよ」

ええいっ!ああ言えばこう言いおってからにっ!!始やこ奴はどうしてこのような減らず口を叩くのだっ!?

ピリリリリリリリッピリリリリリリリッ

突然茶々丸の携帯が鳴り響く

「はい……ご苦労様です始先生………いえ、こちらにはいらっしゃいません……はい………はい、失礼致します」
「始からか?」
「はい、桜咲さんがこちらに来ていないかどうかの確認でした」
「刹那かい?……そう言えば何時の間にか居なくなっているね」
「フン、別にそんな事でわざわざ連絡をよこさないでも良いだろう」
「なんでも「雪広さんに捕まってしまって今直ぐにでも探し出さないといけない」…と言われてました」
「「………」」

私と龍宮真名は無言でお互いを見つめ合い、始が置かれているであろう状況を想像し合った
おそらくコレは同じ状況(先程の授業)を体験し合った者同士でしか分かりあうことは出来ないであろう

「……と、ところで他に刹那が行きそうな場所って何処だろうか?」
「……う、うむ。そうだな何処か心当たりは無いか?茶々丸?」
「始先生と雪広さんは剣道場や女子寮などの女子中等部エリアは先生のバイクで殆ど回られたそうです」

む、既に回った後か……

「となると……『お嬢様』の所しかないだろうね」
「ふむ、自分の目の届かない所に行ってしまったものだから急に心配になった……と言った所か?」
「……これで刹那も分かってくれれば良いんだけどね」
「フン………茶々丸、始に伝えろ「桜咲刹那は『お嬢様』を追って図書館島に居る」とな」
「了解しました」

桜咲刹那、お前は私と同じ……檻の中から届かぬ物に手を伸ばそうとしているだけだ
だがそれでもお前は一体何を望む?自身の幸福か?『お嬢様』とやらの幸福か?それとも………幸福を捨てるか?





―――2003年3月15日 午後15:50 麻帆良学園女子中等部 図書館島 秘密の入り口前

「はあっ……はあっ……はあっ………あ゛――――っ!!やっと撒けたぁ―――!!!」

茶々丸から連絡を受けて図書館島に着いた所までは良かったんだが……
桜咲がネギ達が合宿をしている場所に向かっていると分かる途端、雪広さんの目やら雰囲気やらが一気にヤバくなり
「私も行きます、断固付いて行きます」の一点張り……だけども普通の女子中学生が行ける場所じゃ無い、断じて無い
なんとか説得して引き下がって貰おうとしたが見事に失敗、強攻策には出れる訳も無く、こうして数時間にも及ぶ逃亡を経て
今、何とか雪広さんを撒いて秘密の入り口前に立っている

「つーか桜咲のヤツ、行くなって言ったのに行きやがって……帰ったら思いっきり説教してやる」

そう心に決めた俺は扉を開けて、あの大穴が開いている部屋に向かった
最初から『悪魔化』してるし、何より2度目なので昨日よりも早く目的の部屋に着いた………因みにワニは俺の姿を見た瞬間逃げ出した

「よっこいしょ…っと………あ、やっぱりここに居たか桜咲」
「あ……始先生………」

正直ここに来ていると思ったのは「勘」以外の何物でもなかったが、探していた桜咲は大穴の前に立っていた
……俺の方を振り向いた時に初めて気付いたが、桜咲の顔は思いっきり真っ青だった
多分昨日の俺と同じような事を想像をしたのだろう

「せ…先生……お、お嬢様の……お嬢様のハンカチがそこの穴の近くに……」
「ああ……あのな桜咲」
「私の……私のせいだ……私がきちんとお守りしていれば………」

俺に説明をする隙を与えてくれずに桜咲は何やらブツブツ呟いてどんどん落ち込んでいく
コレって、ほっといたらとんでもなくヤバいんじゃねえのか?

「私は……私h「聞け!桜咲!!」………はっ、はいっ!!」
「昨日ジジイから聞いたんだが、この穴には魔法の仕掛けが山ほど施してあって落ちた奴には怪我とかは一切無いそうだ」
「ほ…本当ですか?本当に大丈夫なんですか!?」
「ああ、今日も念の為確認したしな」
「よかった……本当に……」

今の今まで俺の胸倉を掴んでいた桜咲は『お嬢様』が無事だと分かった途端、その場にぺたんと座りこんだ……結構涙目だったりする
さて、これで桜咲を連れて帰れば騒ぎは大体収まるんだけども……また桜咲のヤツがここに来たらどうしようか?
また居なくなって雪広さんに連行されながら探しに行くのはもう勘弁だし、桜咲もテスト勉強に身が入るかどうか……よしっ決めた!

「連絡は……あー…メールで良いか、ポチっと……お、飛んだ飛んだ。すげーな文明の利器………うし、行くぞ桜咲」
「え…?あ、はい!すいません私のせいでこんな所にまで……きゃあっ!!」

俺は座りこんでいた桜咲を脇に担いで穴の方に向かって歩いた

「あっあの、先生?どこに?」
「あ?どこって…ここ」

桜咲が聞いてきたので俺は左手の人差し指を穴の底に向け、桜咲が理解をする前に飛び降りた

「え?え?………きゃあああああああああああああああああ!!!!!!!」
「これで怪我したらジジイのヤツ絶対シメてやるからなぁ!!!」

滅多に聞けない桜咲の絶叫を聞きながら、底が全く見えない縦穴を一直線に落ちて行った





―――2003年3月15日 午後16:45 麻帆良学園女子中等部 図書館島最深部 地底図書館

「ふーむ…ずっと水に浸っていたハズの本が全く痛んで無いし……この無秩序な本の並び……誰がこんなモノ作ったんだろ?」

僕はバカレンジャーの皆さんとこのかさんの授業が一段落したので夕食までの間、この地底図書館を探検している
でも考えれば考えるほど不思議な場所だなー……全教科のテキストやノートがあって、他にもトイレやキッチンに食材まで……

「―――きゃあああああああああああああああああ!!!!!!!」
「えっ!?悲鳴!?ど…どこからっ!?」

周りを見回すと天井から2人の人影が落ちていくのが見えた

「たっ大変だ!行かなくちゃ!!」

走っていく間、落ちていく人影が段々と誰なのか分かってきた

「ハジメと出席番号15番の桜咲さん!?」

僕は急いで2人の所に走って行くけど、魔法を封印しちゃったせいでいつもよりも全然走れない

「悪い桜咲!もうちょっと我慢してくれ!!」

もう5〜6m位で地面にぶつかるところでハジメは桜咲さんを真上に投げた
そしてそのまま着地してから落ちてくる桜咲さんを両手で優しくキャッチした……すごいよハジメ!!

「ハジメ―――――!!!」
「ん?おおっ!ネギ!!」
「あっあのっ早く下ろしてください!!」

僕がハジメと桜咲さんの所に駆け寄ると、長瀬さんと古菲さんが僕の後ろからやって来た
この2人もさっきの悲鳴を聞いて来たって言ってた、ボクの近くに居たのかな?

「此花殿も此方へ来たでござるか?」
「…ああ、桜咲と2人で探しに来たんだが……どうやらドジったみたいだな」
「左様でござるか」
「そっちの方もまだここに居るって事は…」
「未だに脱出経路は見つかっていないでこざる」
「今はここでテストに向けて勉強中アル」

ハジメと桜咲さんが僕達を探しに……また僕のせいでハジメや皆に迷惑をかけちゃった

「へえ〜勉強ねえ……そうだ桜咲、お前も一緒に勉強して来い」
「ええっ!?急に何なんですか!?…と言うか早く下ろして下さい!!」
「……やだ「一緒に勉強する」って誓わない限り絶対下ろさねえ」
「なぁっ!!!///………わっ分かりました勉強します、しますし誓いますから下ろして下さい!!!」
「あいよー」

桜咲さんがハジメから降りて長瀬さんと古菲さんの方に歩いていった、でも凄く桜咲さんの顔が真っ赤だった

「2人共悪いけど桜咲を案内してくれないか?俺はネギ先生と行くからさ」
「承知でござる」
「わかたアル!」

桜咲さん達3人が奥に向かって行ったと同時にハジメが僕の方に向かって歩いて来た
うぅ……またホレ薬の時みたく怒られた後におしりを叩かれるのかな?

「ネギ」
「う…うん」

僕は怖くてハジメの顔を見る事が出来なくなり力いっぱい両目を閉じてイタいのをガマンしようとしたんだけど

「すまんかった、もっと早く来れなくて」

逆にハジメは僕の頭を撫でながら僕に謝ってきた

「そんな!ハジメが謝る事じゃないよ!!僕の方こそ担任なのにクラスの皆に迷惑を……」
「迷惑って、お前神楽坂に連行されて来たんだろ?」
「う……でも僕が魔法を封印していなかったら……」
「は?お前今魔法封印してんのか?なんで?」
「そ、それは……その……」

僕は先日アスナさんに言われた事と魔法を封印して一教師としてぶつかる事をハジメに説明した

「…なるほどな……うしっ」
「え?わわっ!?」

ボクは突然ハジメに背中を叩かれちゃって、しかも変な声で叫んじゃった…

「思いっきり勉強教えて来いネギ、出口の方は俺の方でキッチリ探しておくからさ」
「ええっ!?ダメだよハジメだけで探すなんて!!」
「んな事言ったって俺に「勉強教えろ」って言う方がフツーに無理だぞ」
「それは……そうかもしれないけれど」
「…肯定させると、されたでキツい物があるな………とにかくだネギ、お互いやれることやって行こうぜ
 それで辛かったり、無理だったら力を合わせていけば良いんだし」
「う…うん」
「うし、じゃ行くか」
「うんっ!」

やっぱりハジメはスゴいなあ、こんな時でもちゃんと落ち着いて……よ〜しっ!僕も負けないぞ!!
皆と一緒にここから脱出してテストで良い点数を取れるように頑張らなくちゃ!!!





舌が肥えたたつみーは何処へ行くwwS’です
原作のこの時点では動かなかった刹那も此処では思いっきり動きますww良いじゃないですか二次制作だものwww

〈続く〉

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