―――2003年3月14日 午後10:40 麻帆良学園 図書館島 秘密の入り口前

「―――で、「アスナのおさるー!!」を最後に連絡が取れなくなり」
「ワラにもすがる思いで先生に連絡したワケなのよ!」

俺はワラかい……

「あ、あの〜……」
「ああ、すまない」

落ち込んでるヒマは無いな…とりあえず状況を整理してみるか
「次の期末テストで最下位を取ったクラスは解散」しかもその中でも悪い人物は留年、更には小学校に戻されるというウワサが流れる
その未曾有の危機に綾瀬さんが図書館島にある「読めば頭が良くなるという魔法の本」の話をバカレンジャーに持ち出すと
ソレを神楽坂が先頭切ってGOサインを出し、バカレンジャー&図書館探検部+ネギの面々が夜の図書館島に潜入後行方不明

「……なんでネギまで付いて行ったんだ?」
「なんかアスナが連れてきたみたいだったんだけど……」
「パジャマ姿だったです…」

パジャマだと?拉致ってきたんじゃねえか神楽坂のヤツ?

「まあいい……連れて帰ってくれば関係無い」
「でも先生一人で大丈夫?本当に私達も一緒に付いて行かなくていいの?」
「ああ、道順は覚えたし大丈夫だ」
「あまり無茶はしないでください」
「おうよ、任せとけ」
「ちゃんと連絡入れてよー!」

―――ゴオォン…

異様に重そうな音をたてながら閉まる扉から目を離して、図書館内部に通じている螺旋階段を降りきった俺の目に飛び込んできたのは
某不思議なダンジョンRPGも真っ青な図書館風のダンジョンだった

「おかしいだろー図書館内部に何で木(言っておくが植木鉢ではない)や滝があるんだー」

麻帆良に住んで数ヶ月並大抵の事では驚かなくなったが……コレは無しだろ、本に水がかかったらどうするんだ?オイ?
早乙女の話じゃあ所々にワナが仕掛けてあるって話だしなぁ

「麻帆良って街はアレか?びっくり人間でも養成してるのか?」

とにかく連絡が途絶えたって場所まで急がないとマズいな……『悪魔化』して一気に行こう
俺は周囲に誰も居ない事を確認してから『悪魔化』して道なき道を一気に駆け抜けた



……

………

向かっている途中、本棚が俺に向かって一斉に倒れてきたので『マハガル』で一気に押し戻した
すると何処からともなく矢が俺に向かって飛んできたのでかわしたり、受け止めてヘシ折った
暫く歩くと床が突然抜け始めたので『瞬動』で床が落ちきる前に一気に駆け抜け
湖(なぜ図書館内にあるのかわからんが)を渡っている最中10mをゆうに超えているワニが襲ってきたので拳で物理的に黙らせた
そして今、ネギ達の連絡が途絶えたという場所までたどり着いた………『悪魔化』の姿でホフク前進ってのは結構シュールだったが

「お―――い!ネギ―――!!近衛さ―――ん!!バカレンジャ―――!!!」

この部屋に入る前に『悪魔化』を解いた俺は部屋に入るなり大声でネギ達の名前を大声で呼んだ

「………」

しかし返事は全く無く俺は少しづつ不安になってきた

「……なっ!!アレって!?」

そして更に不安を募らせるあるモノを見つけてしまった………ソレは一辺10m位の四角形の形をした大きな穴だった

「穴かコレ!?底全然見えねえぞ!」

俺は足元にあった小石を1つ拾い、静かに穴に落とした
前に映画でこうやって穴の大体の深さを調べているのを見たので試しにやってみた………が

「音が聞こえない…聞こえないって事は……」

聞こえないほどハンパ無く穴が深いって事になる訳で……

「ネ…ネギ―――――――!!!」

冗談じゃねえ!!こんな所落ちたら骨の1、2本じゃあ済まねえぞ!!ヘタしなくても最悪の状況だってありうるだろうし
とにかくだ、俺もここで突っ立ってるままでいても何にもならない。もう1回『悪魔化』して俺も下に降りよう
爪や剣で穴の壁を削れば落ちるスピードも遅くなるし、この体なら並大抵の事なら耐えられるしな

「そうと決まれば早速『悪魔化』……」
「いやいや!待ってくれんか此花先生!!」

誰だ!?この時間の無い時に後ろから俺を呼び止めるヤツは!?

「誰だ!?」

振り返った先にいたのは………俺の倍の大きさはある石の人形、簡単に言うと「ゴーレム」がいた

「本当に誰だ!?」
「ふぉっふぉっふぉ、ワシじゃよ近右衛門じゃ」
「ジジイ!?何だその格好!?」
「今、ワシは学園長室から意識と感覚をこのゴーレムに飛ばして動かしておるのじゃ。ハイカラに言うと
 ……イモウトコントロールって奴じゃ、凄いじゃろ?」
「妹?………もしかしてリモートコントロールの事言ってるのか?」
「おおっ!それじゃそれじゃ!!ふぉっふぉっふぉ!!」

ゴーレム…もといジジイが両手をバンバン叩きながら笑ってる……なんでだろう、見た目が違っててもフツフツとムカついて来た

「……ってジジイ、なんでここにいるんだよ!?いや違う、ネギ達は無事かどうか知ってるか!?この穴に落ちちまったのか!?」
「安心せい此花先生、全員無事じゃ。この穴には「衝撃吸収」や「速度緩和」等の結界が幾重にも施しておる
 例えこのゴーレムが落ちたとしても小さな欠片一粒たりとも欠けんはせんぞ」
「ほっ…良かった……」

ジジイの言葉を聞いた途端張り詰めていた緊張が解けたみたいで、両肩の力が一気に抜けるのを感じた

「けど良いのかジジイ、早い所ここから出ないと明日も学校だろう?」
「その事じゃが、あの子達はこのままあの場所でテスト前日迄の間「勉強合宿」をしてもらう事にした
 既にこの事はこの図書館島の司書に連絡を入れておるし、準備も万全に済んでおる」
「……は?」
「そして此花先生には残った2−Aの子達を明日1日見ていて貰いたいのじゃ、まあ明日は土曜日じゃて
 そう大変なものでも無いじゃろうよ」

俺一人で……ってまぁ今まで何回かやったし大丈夫だろうけどさあ………まあいいや、俺の事はどうでも良いとしてだ

「ところでジジイ、この事…「勉強合宿」とやらの事は他に誰か知っているのか?例えばネギとか?」
「うむ、誰も知らん」
「……この穴の事も?」
「うむ……ってどうしたんじゃ?急に怖い顔をして?」

ジジイの2回目の返事を聞いた後、俺は全力で握り固めた右拳を全力の『気』で強化しゴーレムのボディに全力のまま叩き付けた

ドゴッ!!!

「おおぉ……ぉ………」
「ムダに怖い思いさせてんじゃねえよ!ハゲ!!」

その後ゴーレムの全身にヒビが入り、2〜3秒もしないうちにゴーレムはただの「崩れた石」になった





―――2003年3月15日 午前0:50 麻帆良学園 図書館島 秘密の入り口前

ゴゴゴゴゴ……

異様な音がする扉を開けて、扉の前で待っていた早乙女と宮崎さんに右手を上げて挨拶しようとした途端

バチンッ!

思いっきり早乙女にブッ叩かれました、ビンタです

「急に何しやg「「連絡入れてよ」って言ったでしょ!全然来なかったし、かけても出なかったじゃない!!」……はい、スイマセン」

図書館の中は殆ど『悪魔化』していたからケータイを使おうにも全然使えなかったし、使おうともしなかったな
そういや行く時に早乙女から「連絡入れろ」って言われていたな……マジですまんかった
隣にいた宮崎さんの方もかなり心配していたような様子だった
俺は泣いてるんだか怒ってるんだか分からない早乙女さんと思いっきり心配をかけた宮崎さんの前で土下座をして謝り
ジジイから聞いた「勉強合宿」の件を話し、2人と一緒に女子寮に帰って行った



……

………

そういや土下座するのってコレが始めてかも……





―――2003年3月15日 午後 9:30 麻帆良学園女子中等部 2−A教室

「―――と、言う訳で今言った7人は図書館島に合宿に行ってます」
「「「ええ――――――――――――っ!!!???」」」

まあ、こういう反応だと思ったよ
雪広さんに至っては周りの生徒がドン引きする位悔しさに震えていた、ヘタすると血涙あたりなら出せるんじゃないか?
他の生徒は―――ん?桜咲?アイツパッと見フツーに流してる様にしてるけど、目が思いっきり泳いでるぞ。挙動不審もいいとこだ

「まぁ落ち着け、そんな訳だから今日の英語の時間は自習だ。なんだったら他の教科をやってても良いぞ」
「はーちゃん先生ー」
「はーちゃん言うな!……何だ朝倉?」

いつの間にはーちゃん広まったんだよ……双子め覚えてろ

「え〜っと…ある筋からの情報なんだけど、2−Aが今回のテストで最下位脱出しないとネギ先生がクビになるって話……本当?」
「あ〜……」

一応ジジイからの課題だし、俺の口からハッキリ言っちゃって良いのかな?
でも「失敗したらクビ」なんて一言も書いてなかったけどなぁ……あ、でもネギって3月までの教育実習生なワケだから……

「クビに…ってか元々ネギ先生は3月までの教育実習生だからな、2−Aの順位が変わらなかったら……」
「変わらなかったら愛しのネギ先生は一体どうなると仰るんですのぉ!!!???」
「がっ……ゆ、雪…広さん……苦しい……」
「わあっ!いいんちょ!!ストップ!ストップ!!」

「『瞬動』でも使ったんじゃねえか?」と思ってしまう位の速度で、雪広さんが自分の机から教壇まで一気に詰め寄り
俺のYシャツの襟を掴んで締め上げ、かつ前後にブンブンと振っている
……因みに雪広さんを止めようとしているのは朝倉だ

「ガハッ………クビにはならんけど、実習期間が終了しちまうからどっち道2−Aの担任からは外れるな」

何とか俺から雪広さんが剥がされた………なんか雪広さんからは刀子さんと同じ匂いがするわぁ、ホントに

「な…なんという事でしょう……ネギ先生が……ネギ先生がいなくなってしまうかもしれないなんて………」

あ、雪広さん崩れ落ちた「Orz」←こんな感じで

「………まぁとにかく、合宿しているメンバーも月曜の朝にはちゃんと出てこれるから安心してくれ」
「「「は―――い」」」
「じゃあこのまま自習に入っててくれ、俺は一旦職員室に戻らなきゃならんからな」



……

………

15〜6分経った位だろうか……俺が職員室から2−Aの教室に戻ってきた時には………

「皆さん!!今回は一人15点増しでお願い致しますわ!!!」
「ムリだって〜」

黒板の前に立って、かなり無茶な事を言い出している雪広さんが居た………正直言ってかなり怖いし近づきたくない

「無理ではありません!ネギ先生への愛を持ってすれば必ず点数を増やす事ができます!!」
「「「「「ええっ!!!???」」」」」
「これより!2−Aクラス委員長雪広あやかの名の元に「緊急テスト対策特別講習」を致します!!
 ここに居る皆さんが全員一致団結して、ネギ先生を未曾有の危機からお救い致しましょう!!!」
「いいんちょ、ちょっと落ち着いt「お黙りなさい朝倉さん!私は発言を許可してはいませんわ!!」いいっ!?」

止めに入ろうとした朝倉を雪広さんは一喝し、更にはとんでもないことを言い出した

「発言は挙手をしてから、発言の頭と最後には必ず「サー」とお付けなさい!」
「いや…だからさいいんちょ……」
「「いいんちょ」ではありません!私の事は「ビッグ・マム」とお呼びなさい!!分かりましたか!!!???」
「「「「「い、イエス!!マム!!!」」」」」

朝倉を始め運動部組やチア組、仕舞いにゃエヴァ、龍宮、長谷川さん、茶々丸なんかも勢いや迫力に押されて返事をした
……双子なんぞは今にも泣きそうだ

「あ、そういえばジジイからネギ達の合宿が何時に終るか聞くの忘れてたなぁ」

俺は教室のドアからバレないようにそっと手を離し、そのまま学園長室に向かって静かに歩き出した
………だがそれ故に、桜咲だけが教室の中に居なかったのを見逃す原因になった事を今の俺は知る由も無かった





ちょっと最後の方無理あったかなー?S’です
その気になればいいんちょの言葉使いをもっと激しく出来たのですが弟に見てもらった瞬間に言われた言葉
「これヤバいんじゃね?」の一言で一気にチキンになりました
……海兵隊式の新兵訓練って本当にエグいんですよ

〈続く〉

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