―――2003年2月24日 午前8:00 麻帆良学園女子中等部 職員室

「へー今日新しい先生来るんですか」
「ああ、今日から早速2−Aの担任として働いてもらうんだよ」
「へ?って事は……」
「うん、これから暫くは出張の方がメインになるね」
「あらまー……2−Aの皆も大変だ」
「ハハハ、皆なら大丈夫。新しい先生とも直ぐに仲良くなれるさ」

まあその辺は俺も臨時担任の仕事で何度か(何時の間にか呼ばれるようになったんだよ…)見てきたから分かる
あいつ等ならあのノリで直ぐに受け入れてくれるだろう。だけど……
神楽坂は絶対ヤバいだろう……ヘタすりゃ暫くの間生ける屍になるぞ、アイツ

「それでその先生ってどんな方なんですか?」
「そうだね…名前はネギ・スプリングフィールドって言うんだイギリスの方の出身でね、どんな…と言われると…
 まあ見た方が早いかな、ハハハ」

へえ〜……スプリングフィールドねえ……どっかで聞いたことがあるな……けど何だっけ?ジジイからだったかな?
あ、ジジイと言えば…

「そういや今日ジj…じゃない学園長に呼ばれれたっすね、俺」
「そうなのかい?」
「ええ、若干真面目な口調でしたよ」

何時もなら3〜4割位はふざけてるジジイがあの時に限っては完全にマジだったんだよなぁ…もしかして新しい先生絡みか?
う〜ん……マジな話ならこっちもマジで応えないといけないけど、これ以上仕事増えるのもなぁ……
まあこれでナメてる話ならそろそろ『ダイン』辺りを食らわせる時期になってきたなぁ

「あ〜…始君…何を考えてるのかな?」
「今日の話がふざけてた話なら学園長に何を食らわせてやろうか…とか、そろそろ1段階上のヤツを出そうか…とかですね」
「……手加減してくれよ始君」

タカミチさんが苦笑いを浮かべながら軽く釘を刺してきた…が幾らタカミチさんでもこれは譲れないな
まあフリだけでも返事はしとくけどさ

「まあ善処h「何だとこんガキャァーーーーーー!!!!!!」……何だっ!?」

朝っぱらから喧嘩かっ!?どっかで聞き覚えのある声だったけど…
俺の方が窓に近かったので片開きの窓を開けて、タカミチさんと外の様子を見ると……
神楽坂が小学生らしきの男の子をアイアンクローで持ち上げていた、男の子はジタバタしているが神楽坂の腕は微動だにしない
……分かりづらかったのなら『ゴッ○フィンガーのヒート○ンド手前』だと思ってくれ

「何やってんだ……」
「あぁ〜……始君、あの子を助けて貰えるかい?僕の友達なんだよ」
「了解っす」

そうタカミチさんに告げた俺は窓からひょいと降りて、ちょいと急ぎ目に虐殺(?)現場に向かった
ヘタすると『ヒートエ○ド手前』が手前で無くなる可能性があるからだ…そんな物騒な事を考えてる間に俺は2人の側までやって来た

「そこまでだ神楽坂、ここで殺人事件を起こそうとするな」
「起こそうとしてないわよっ!!」

いや、コレは1歩手前位まで行ってたよ

「…で?何がどうしてこうなったんだ?」

とりあえず事の発端を当事者に聞く事にした、すると神楽坂が……

「そうだ!アンタ高畑先生と同じ指導員なんでしょ!?さっさとこのガキを初等部に連れて行きなさいよ!!」

「アンタ」って……一応俺先生やってるんだけどね……

「あーそれは無理d「何でよっ!!??」……朝っぱらから大音量だな、後で話すから深呼吸でもして落ち着け
 …で、近衛さん何があったか聞かせて貰えるかい?神楽坂は今クールダウンさせるから」
「あ…はい、ええですよ…」

近衛さんは淡々と事情を話してくれた……なるほど「失恋」ねえ、そりゃあ神楽坂が起こるのは当たり前だわ
なんつっても、神楽坂にとっちゃあ死活問題だからなぁ
で、ちょいと話は変わるが……どうも俺は近衛さんに嫌われてるか距離を取られているふしがあるなぁ
今話してくれている時もフツーに視線合わせてくれないし、歯切れも悪い
俺的にはこれと言って嫌われるような事をした覚えは無いんだが……このまま「そうですか」って感じでほっとく訳にもいかなんだろう
仲良しこよし…とまではいかなくてもフツーにアイサツを交わしたり世間話をする間柄っての?それ位にはなってもいいだろ?
……っと話が逸れたな、っと

ゴチンッ

「痛っ…何するんですかぁ!?」
「何って…おしおきの拳骨?」
「おしおきって……僕何か悪い事したんですか!?」

ありゃ…無意識?そりゃあ何ともタチが悪いなぁ…

「ボクはこのお姉さんに何したか分かるのかい?」
「当たり前ですよ!ボクはそのお2人が占いの話をされていたので、ボクもそこの方を占ったんです
 そうしたらかなりドギツい失恋の相が出ていたのでお知らせしたんです」
「…その「ドギツい」って部分も言ったの?」
「はい、嘘はいけませんから」

キッパリと言い切った横で神楽坂が怒りでもう一度襲い掛かろうとしたが近衛さんが何とか止めてくれたようだ
子供ゆえの残酷さって所だな……神楽坂、運が無かったなお前

「いいかい?ボク、親切のつもりで言っても人にはそれが全て「親切」と受け入れられるとは限らないんだよ
 相手によっちゃ真逆の意味で捉えちゃうこともあるんだ……今みたくな」
「え?えぇ?どういうことですか?」
「例えば……見ず知らずの相手にいきなり『占いで明日死にます』って言われたらボクはどう思う?」
「それは…失礼な人だなって思います……けど」
「分かってるじゃないか、そーゆー事だよ」
「で…でも僕は死ぬとかじゃなくて…ただ、失恋するって…」
「だから「相手による」って言ったろ? ボクにとっては軽い事かも知れないが神楽坂にとっては命と同じ
 もしかしたらそれ以上かもしれない」
「………」
「それだけ言葉ってのは重いモンなんだよ…分かったら後でちゃんと謝っておきな」
「……はい、スミマセンでした」
「おいおい俺じゃないしそんなに落ち込むなって」

そう…あん時エヴァが庇ってくれた時は本気で嬉しかったし、ガンドルさんが侮辱した時はマジでキレかけたからな
他にも桜咲や刀子さんの告白、それに暴走した時もあったしな……まあとにかくだ
俺としては「言葉の重み」ってヤツは十分理解しているつもりだ……って何だ?2人共そんなハトがマメ鉄砲食らったような顔して?

「どした?……なんか変な事言ったか俺?」
「いや…ちゃんと「先生」してるんだなって……」
「OK、お前が普段俺をどんな風に見ていたか良く分かった……タカミチさんに告げ口してやるから覚悟しろ」
「い〜〜〜〜〜やぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

神楽坂絶叫、そしてそこの男の子が謝るタイミングを完全に逃す……ちょっと悪い事したな

「あの…ところで此花先生?この子って一体何しに来たん?」
「あ…そうよ!一体アンタは何しにきたのよ!?ってか追い出すのが無理ってどういう事なのよ!?」

あ、復活した

「ああ、そのk「お久しぶりでーす!!ネギ君!」」

タカミチさん、見てたんならこっちに来ても良いのに……って今なんて言った?葱君?

「久しぶりタカミチーッ!」
「…!?し、知り合い!?」
「麻帆良学園にようこそ、良い所でしょう?「ネギ先生」」
「え…先生?」
「あ、ハイそうです」

ここでネギと呼ばれた少年はコホンと一つ、タカミチさんと本人以外全員が放心している中気付かずにせきをして仕切りなおした
……大物だよこの子

「この度この学校で英語の教師をやることになりました、ネギ・スプリングフィールドです……」

と軽く一礼、そんな小さな新任の先生に俺と神楽坂は……

「「え…ええ―――――っ!!??」」

絶叫しかできませんでした
そして俺よりも早く復活した神楽坂がネギと名乗った男の子にまた掴みかかった

「ちょ…ちょっと待ってよ!?先生ってどーいうこと!?あんたみたいなガキンチョがー」
「まーまーアスナ」

近衛さんが落ち着かそうとするが殆ど効果は無く、それは何時の間にか近くまで来たタカミチさんに神楽坂が気付くまで続いた
そしてそのタカミチさんは何時もの笑顔で「ハハハ」と笑いながら更に爆弾発言を続けた

「いや彼は頭が良いんだ安心したまえ」
「先生…そんなこと言われても……」
「あと今日から僕に代わって君達A組の担任になってくれるそうだよ」

が―――――――――――――――――――――――――ん

空耳かどうかは分からないけど確かに神楽坂の方からこんな音が聞こえた…
近衛さんもそれなりに驚いたようで大きく目を開けて「えー」とリアクションと取っていた

「そ、そんなぁ…アタシこんな子イヤです。さっきだってイキナリ失恋…いや、失礼な言葉を私に……」
「いや、でも本当なんですよ」
「ネギ君!まt「本当言うな――――!!!」…遅かったか」

神楽坂はかなりテンパってきた様子で、目尻にはうっすらと涙が浮かんで来た様に見える
だがまだまだ神楽坂は止まらない「まだまだこんなもんじゃないわよー!」と言わんばかりに
……恋する乙女ってのはここまで恐ろしいものなのか

「大体あたしはガキがキライなのよ!あんたみたいに無神経でチビでマメでミジンコで……」

ついにはネギ君に掴みかかり(何度目だかもう忘れた)泣きながら言葉を紡ぎ出した神楽坂
ここまで来ると何か知らんが神楽坂に同情してしまう、近衛さんとタカミチさんも同じなのか全く手も声も出せずにいた

「ハ…ハ…」

神楽坂の長い髪が顔の前でチラチラしているせいかネギ君が急にくしゃみをする寸前のアレをし始めた頃から雰囲気が一気に一変した
ネギ君に急にかなりの『魔力』が集まり出した
おいおい!いくら何でもムカついたからって魔法ぶっ放すってか!?そりゃヤバいって!!
俺はネギ君の襟を掴んでる神楽坂を引き剥がして2人の間に入ろうと飛び出したが……

「はくちんっ!!」

ビンッ、ビビンッ―――バシッ

「痛てぇっ」

ズバァッ

時すでに遅く……ネギ君に集まった『魔力』はくしゃみと共に『武装解除』(だったかな?)になって神楽坂を襲った
制服のボタンというボタンははじけ飛び(1発顔に当たった)服も下着を残して神楽坂の体から剥ぎ取られた
……毛糸のくまパンだった
被害者の神楽坂はその場にペタンと座り込み、加害者のネギ君はぷんぷんと頬を膨らませて怒り
近衛さんは何か納得したように頷き、俺とタカミチさんは視線を神楽坂を見ないように別の方向に向けた
その数秒後状況を理解した……というか理解してしまった神楽坂の口から

「キャ――――――――ッ!!何よコレ――――――――ッ!!!」

絶叫が飛び出した…
その絶叫で我に返った俺はとりあえず背広の上着を神楽坂にかけ
タカミチさんはダッシュ(恐らく全力)で売店にある予備のジャージを取りに走って行った
神楽坂……失恋の件はどうだか知らんが、間違い無く今日はお前が生きてきた中で一番の厄日だろうよ……




あとがき

原作第1話とやっとこさ合流したS’です
ネギと始と2−Aメンバーがこれからどうなるか……どうなるんだろう?
でわ ノシ

〈続く〉

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