―――2003年1月10日 午前8:35 麻帆良学園女子中等部 2−A

「あ”ぁ〜〜〜〜〜〜っ!!!高畑先生はどうしたのよ!?もう30分過ぎちゃったのに!!」
「アスナ落ち着き〜きっと職員会議とかが長引いてるだけとちゃうん?」
「木乃香さんの仰る通りですわ。アスナさん少し静かになさい」
「うううぅぅぅ〜〜〜〜〜………」

高畑先生が朝のSHRに遅れているため、朝から神楽坂さんの機嫌がとても悪い
そしてそれをお嬢様と雪広さんが押さえているが空気が段々悪くなってきている………高畑先生早く来てください
今日は金曜日。明日は土曜日で休みだが、SHRの次は高畑先生の英語の授業だから神楽坂さんにとってはこの上ないもの(本人談)
との事らしいのだが……

「そういえば今日高畑先生見た人居る?私朝から見てないんだよね〜」
「ふむ、確かに言われてみれば拙者も見ていないでござる」
「ボク達も見てな〜い」
「です〜」

そんな中煽るのか心配しているのか分からない微妙な表情で朝倉さんが皆に問いかけそれを楓と鳴滝さんたちが答えた
それを皮切りにクラス全員が「見てない」や「知らない」といった答えを言い始め、それを聞いた神楽坂さんが……

「もしかして高畑先生が今日(教室に)来ていないのって……まさか事故!?もしかして病気!?
 イヤァァァァァァ―――――――高畑せんせ―――――――――――――――っっっ!!!!!!!」

泣きながら絶叫………確実に朝倉さんはこうなる事を予測していたと皆に話しかけたと思う、悪い人だ
……「見ていない」と言えば今日から管理人業務に復帰したはずの始先生の姿も私は見ていない
学校に向かう時女子寮の前はきちんと掃除してはあったのだが、駐輪場にオレンジ色のバイクが無かった……
そんな私の思考とクラスの騒音を打ち破る拍手の音と声が教室中に響いた

―――パンッ!!!

「遅れてきたのは悪かったが騒ぎ過ぎだぞ、もうちょい静かにしろ皆」
「「「「「管理人さんっ!?」」」」」
「始っ!?」
「始先生っ!?」
哥々(ココ)っ!?」

ここ最近見慣れてきた服装と大きくかけ離れていると言って良い程の格好をした始先生が入り口の前で立っていた
(普段はネクタイを着用せず、上着のボタンは全開、Yシャツの第2ボタンまでは常に開いていると言ったラフな格好)
基本この時間、この場所で決して会う事の無い人物に私含めクラス全員が大声を出して驚いていた
そして私は左の脇にプリントの束と出席簿が挟んであるのを見付け、始先生がここに来た理由を予想したが
正直私はその結果に対し素直に喜んで良いものかどうか迷っている。……確か始先生は料理の修行で麻帆良に来たのではなかったのか?





おーおー騒がしいねえ、中坊って男も女の子も変わらずに騒がしいほど元気なもんなのかね?
まあ、こう元気なのは良いけど一応俺の立場って「先生」な訳だしあんまり回りに迷惑なマネは見過ごすわけにはいかない
そんな訳で今さっき拍手で一発「パン」と鳴らして騒がしいのを止めたつもりだったんだけど………ドン引きにさせちまったか?
「失敗したかな〜…」と頭の中で呟きながらも俺はとりあえず脇に抱えている主席簿とプリントを置く為に
黒板の前にあった教壇に向かい、その2つを置いた後生徒達の方を向いて話しかけた

「あ〜……急に俺が来て訳がわかんないだろうから説明するとだな
 今朝早く高畑先生に急な出張が入ってしまって、なおかつ他の空いている先生方が片っ端から講習に行ってる為
 急遽俺が一日高畑先生の代わりでこのクラスを受け持つことになりましたので…そこんとこヨロシク
 まあ行き先は国内としか聞いてないけど、遅くなるって言ってなかったし一日だけ我慢してくれ」
「しゅ、出張!?聞いてないわよ私達!?」
「出席番号8番の…神楽坂さん……だな。いきなり俺みたいなヤツが来てパニクるのはもうちょい静かにな」
「そうですわアスナさん!他のクラスはもう授業に入っているのですからバカみたいな大声を出すのはおよしなさい!」

えー…っと29番の雪広さんだな今の娘は
んでその雪広さんがさっき怒鳴った神楽坂さんを注意した訳なんだが……キミも声ちょいと大き過ぎ

「何よ!?高畑先生の生徒の私達が説明を求めて何が悪いってのよ!?バカいいんちょ!!」
「あら?おサルのアスナさんが「求める」なんて言葉良くご存知でしたわね…ですが説明なら今此花先生が仰ったでしょう」

いつの間にか席を立った2人が段々と詰め寄って来て…

「フン!このショタコンのくせに何イイ所見せようとしてんのよ!!」
「何ですって!?このオジコンのおサルさんのくせに!!」

お互いブレザーの襟掴んでガン飛ばしちゃってるよ……アレですか?スケ番ですかアンタらは?

「あーもう2人共落ち着けっての……もう」
「うわっ」
「きゃ」

このままだとさっきの様な騒がしい状況に戻りかねないので2人のブレザーの後襟をそれぞれ片手で掴んで引き離した
現在、2人共中ブラリな状態です……しかしアレだな、猫を摘んで引き離したイメージに感じたのは俺の気のせいか?
つか所々で「おぉー」なんて驚きの声がしたが驚いてないで止めてくれよ、この2人を……

「神楽坂さんの言いたい事もわからんでもないけどさ、ここはちょいと大人になってくんねーかな?
 それに……あまりにも酷かったら高畑先生に報告しないといけなくなるし」
「う゛っ……」
「雪広さんもそれで良いな?」
「了解いたしました…」

なんとか収まってくれたので2人を下ろして席に戻らせた………やっと出席取れるんかよ

「時間食ったけどこれから出席とるからなーっと……相坂さん」
「―――はい」

何か声遠くない?

「明石さん」
「は〜いっ!」

元気があって良いね

「朝倉さん」
「はいは〜い」
「自重」
「ええっ!?」

うん、マジ自重



……

………

「絡繰さん」
「はい」

マジで学生やってるんだ……

「釘宮さん」
「はい」

うん普通

「古菲さん」
「はいアル!哥々!!」
「……そのココってのは?」
「朝倉が「きっと此花先生は妹萌えだからかまって貰えるようになるよー」って言ってたアル!そんな訳でワタシと勝負するアルヨ!!」
「何が「そんな訳」だ、黙って座ってろ―――朝倉……後でおぼえてろよ」
「ピピー…(口笛)」

誰が妹萌えだ、誰が

「近衛さん」
「あ……はい」

あー…怖がらせたみたいだな〜……年頃の女の子だし気を付けないとマズいよな、やっぱり…
それにしても近衛か……ジジイと同じ苗字だけど……まさかなぁ

「早乙女さん」
「は〜い………ところで先生ってさ葛葉せんs「はい次ー」…えぇ〜?」

お前朝倉2号っ!?

「桜咲さん」
「は、はいっ」

落ち着け……俺もだけど



……

………

「龍宮さん」
「フッ……はい」

お前今鼻で笑ったな?コノヤロウ



……

………

「長谷川さん」
「…はい」

長谷川さんもこのクラスだったのか、なんだろうなこの「知り合いが居る」率の高さは?

「エヴァンジェリンさん」
「………何だ」
「返事はどうした?………フルネームバラすぞ」
「フン……」
「エヴァンジェリン・アタナシア・k「はいっ!!!」……結構」
「何故知っている?」
「高畑先生経由」

そんなに知られたくないのか?ミドルネーム?可愛らしいじゃねえか



……

………

「え〜…最後に、ザジさん」
「……………」
「「ほ〜い」じゃなくて「はい」だろ?」
「「「「「嘘ぉっ!!!???」」」」」

え?そんな凄い事?



……

………

なんとか無事(?)に出席を取り終えた俺はそのまま1時間目の英語を始める為に預かっていたプリントを配り始めた

「今日の英語はこのプリントをやっておいて下さい、終ったらさっきみたく騒いだり教室から出ない限りだったら自由にして良いから
 ……あぁ、でも早く終った人は極力他の人の手伝いをして貰いたいな、多分来週答え合わせとかするだろうし」

実は俺が来るの遅かった上に、序盤騒いでたから時間的に余裕が無いだけだったりする

「この雪広あやかにお任せ下さい此花先生」
「了解ネ」
「分かりました」
「はい、分かりました」
「は…はい〜……」

クラスメイト思いで助かるよ、ホント

「因みに俺の所に来てもあまり力にはなれそうには無いと思う……頭悪いからさ」
「「フッ……」」

今のは龍宮とエヴァだな……ちくしょう自分の学力が憎いっ!



……

………

雪広さんを筆頭に超さん、葉加瀬さん、那波さん、宮崎さんの活躍により何とか無事に1時間目の授業を終らせる事が出来た
だがまだ1時間目だ、後4回もある事に俺は朝腹を括ったはずなのに軽く落ち込んだりする
………先生ってすっごく疲れるんだな、初めて知ったよ





―――2003年1月10日 放課後 囲碁部部室

「あの後はどうだった?始?」

―――パチン

「お前等のクラスが一番しんどかったよ……っと」

―――パチン

「クックック…そうだろうな」

―――パチン

「笑い事じゃねえよ……このっ」

―――パチン

「だけど偶には良いものだね、そのうちにまた来て欲しいよ此花先生」
「良かったな始、好評で……そら、王手だ」

―――パチン

「ぐぅっ!」

囲碁だと思っていた人ごめんなさい今将棋打ってます
何故に囲碁部部室で将棋なのかというと、俺が囲碁は無理と言ったら茶々丸がダッシュで将棋を持って来たからです
因みに今4連敗中、ハンデで飛車、角、金落ちでやってるのに王手食らってます

「ん?どうした?もう降参か?始?クックック……」
「フッ…」

因みに龍宮は「ヒマだから」という理由で此処にいます

「うっせぇ!今起死回生の一打を打ってやるから覚悟しとけ!!」
「そうか…茶々丸、おかわりだ」
「はい、マスター」

ちっきしょうっっ!!
え〜っと……こっちに行くと桂馬が居て、こう逃がすと歩が来て、戻すとさっき取られた金が……

「先生、ここに歩を置いたら助かるだろう」
「おぉっ!」

助かるっ!ナイスだ龍宮!!これで勝ったらあんみつ奢ってやるからな!

―――パチッ

「どうだっ!?エヴァ!」
「2歩で始さんの負け、マスターの5連勝です」
「……はい?」
「プッ……ククク……」
「フッ……フフフ……」

何?負け?2歩?

「「アーッハッハッハッハッハッハ!!!!!」」
「表出ろぉっっ!!!!お前等ァアアア!!!!!」
「あぁマスター…あんなに面白そうに…」

2度とお前とやらねえよ!将棋なんて!!!




あとがき

1回の更新で初(だったと思う)の3話投稿……コモレビさんごめんなさいS’です
3−A……今はまだ2−Aですが、始と絡むとあんな感じになります
そして無謀にもエヴァと将棋で勝負する始、案の定ズタボロですしかも最後はハメられて自爆><……あの参謀が見たら確実に泣くぞ

〈続く〉

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