―――2002年12月 4日 午前 1時過ぎ 麻帆良学園 女子寮管理人室前

「ここですね…彼の部屋は…」

世間一般的に人々が夢の中にいる時間に始が住んでいる部屋の前にある女性がいた…
―――葛葉刀子
神鳴流の剣士である彼女は実力も折り紙付きであり、常に冷静沈着にして容姿端麗。更に毎年麻帆良学園内全ての男子生徒内で行われる
「美人教師ランキング」「担任になって欲しい教師(女性限定)ランキング」「踏まれたい女性教師ランキング」等
各ランキングに常に上位にランクインしている…がそれが別に彼女の全てでは無い
実際2■才である彼女は7年前に当時まだまだ交流が乏しく、お互いの組織が不仲であった中
周囲の反対を半ば振り切る形で西洋魔術師である男性と結婚しているが……離婚、バツイチになった
本人の年齢もあり「結婚」を前提とした条件で男性(一般人、魔法関係問わず)を探しているが
教師、魔法先生とかなり多忙の為お互いの時間が取れずその反動で時間が取れれば男性が引く程濃厚に尽くす
結果として男性側から分かれ話を持ちかけられる
彼女が彼氏と分かれた夜は絡み酒、泣き上戸、グチと飲み会の席で嫌がられる三種の神器を繰り出しながら
主に同僚である源しずな教諭と共にヤケ酒をあおっている。そんな彼女が何故に今此処にいるのかというと……





―――13時間前 麻帆良学園女子中等部 学園長室

「…失礼します、学園長」

昼休みが始まると同時に私は突然学園長に呼び出された…始さんとお昼を一緒に食べようと思ってのに!!
始さんに「あ〜ん」して、始さんから「あ〜ん」して貰って…始さんのほっぺに付いたご飯粒を私が取ってそのまま食べて…etc
…そんな夢のような時間を邪魔された私は今現在かなり、確実に、思いっきり機嫌が悪いです
今なら学園長の1人や2人確実に斬り捨てる事が出来るでしょう、刀が汚れるので実際は衝撃波だけで斬りますが…

「おぉ、来たかね葛葉君。急に呼びたててしまってすまんのぅ」
「……………いえ、問題ありません学園長」
「返事までの間が長かった気がするんじゃが……用件はこの鍵を渡そうとおもっての、ほれ」

学園長が投げてよこした鍵を受け取ったが私はそれが何の鍵で何に使うか全く分からなかったが
鍵に付いていたタグを見ると其処には信じられない文字が書いてあった

『女子寮管理人室』

「こ、これは…は、は、始さんの部屋の鍵―――――――――っ!!!!!?????」
「ふぉっふぉっふぉっ、頑張るのじゃぞ」
「―――ッ!!」

その一言で私は全てを理解した…これはつまり、学園長公認で「今夜行け!」と言う事!!??
それを確認するかの様に学園長に目線を向けた私が見たものは…御仏の様な笑顔でサムズアップする学園長の姿だった

「わ、私!頑張ります!!ありがとうございました――!!」

剣の師匠にすら滅多にしないほど深く頭を下げた後、私は自身の限界以上の速度をもって自宅に戻り支度と夜の準備を始めた



……

………

余談だが、この日学園内を異常な速さでスキップをする葛葉刀子教諭を目撃した生徒や教員が数多くいたとか…





―――そして時間は冒頭に戻り 女子寮管理人室前

「お邪魔しま〜す…」

早速鍵を使って中に入る、しかし私が言うのもなんですがチェーンは掛けておいた方が良いかと思いますよ、始さん
まあ今はチェーンなんて掛けていても斬っちゃいますけど
そのまま進んでリビングに入った私は部屋を見回してつい溢してしまいました…

「男の人にしてはかなり片付いている部屋ですね……正直もっと汚れているんだと思っていましたが」

これでは「お掃除」を理由に部屋に行けないですね、始さんはお料理も出来ると言いますし
…やはり今日ここで「既成事実」を作るしかありませんね!ええ!!そうですとも!!!
出来るなら今日で子供も授かりたいですね「一姫二太郎」といいますが私としては最初は始さん似の男の子が良いですね
何て呼んでくれるんですかね?ママ?それともお母さん?ですが剣の修行の時は師匠と呼ばせましょう、剣の道に甘えは禁物です
そして休日には家族3人で一緒に夕食の支度をして、食べて、子供が寝静まった頃に始さんが…
「お前も食べたいな」って言って迫って来て―――キャーッ!キャーッ!!キャーッ!!!



……

………

…いけないいけない、あまり妄想に耽っていては(現実の)2人の時間が無くなってしまいますね、早速準備をしなくては…
準備と言っても下着(勝負下着)姿になるだけなので簡単なのですが

「入りますよ〜…」

リビングと同じように片付けられた寝室…その窓際にあるベッドの上に始さんが寝ている
布団を頭まで被っている様で残念ながら寝顔は見ていませんが、これからずっと見ることが出来るから今は我慢します
…こんな事をして始さんは私の事をどう思うでしょうか?はしたない女と軽蔑されるかもしれませんね
ですが、あの朝から始さんの事を想う気持ちと感じる胸の鼓動は決して嘘偽りではありません!
こんな形でしか想いを伝えられない私をどうか許して―――

カチッ

……え?灯りが?





―――灯りが付く少し前 女子寮管理人室内 寝室

コノヤロウ、人が気持ち良く寝てたってのにそんな嫌な気配だだ漏れで泥棒に入ってきやがって
まさか『別荘』でエヴァに襲撃されまっくって身に付いた気配を察知する感覚(危機管理能力って言うのか?)が役に立つ時が来るとは
正直喜んで良いのかどうか微妙な心境だ…
とにかく…これはサツに突き出す前に骨の1、2本は折ってウサ晴らしでもさせて貰うしかないよなぁ
とりあえず…えーと…電気のスイッチが〜…っと、あったあった

カチッ

「人の部屋にまで入るなんざ良い度胸な泥棒だなぁ………ってぇ!?」

あれ?何かおかしくね?なんで葛葉先生が俺の部屋にいらっしゃるんですか?………下着姿で

「あ、あの……始さん?」

夢か?コレ夢か?…頬っぺたつねてみるか?……痛っ!…痛いって事は夢じゃないって事だよなぁ…

「これはですね…あの……」
「わ――――――っ!わ――――――っ!!わ――――――っ!!!わ――――――っ!!!!」

と…とにかく後ろ向かないと…色々と見えちまうっての!

「な、ななな…なんて格好してるんですか!?」
「え?え・・・とお気に入りのブラとショーツとガーターベルトですが…」
「説明しないでいいですから!まず、早く、早急に服を着て下さい!!」

…上半身素っ裸の俺が言う事でも無いだろうが



……

………

「…つまりジジイから俺の部屋の鍵を渡されて、そのまま勢いで夜這いに来たと」

ただ今葛葉先生から事の事情を聞きだしている…お互い服はちゃんと着ているぞ、勘違いするなよ
ってか、この人がここまでアグレッシブだったとは知らんかった…

「とりあえず勝手に入って来た事とか寝込み襲った事は明日…ってか朝以降に話し合うとして、今ん所はこのまま寝てしまいましょう
 葛葉先生は俺のベッド使って下さい、俺はまたそこの「―――嫌っ!!」うわっ!?」

急に葛葉先生が飛びついて来た…もう少し勢いついてたら押し倒されてたのは黙っておこう

「私は始さんを愛しています…確かに出会って殆ど日にちが経ってはいません、それは事実です
 ですが私の心の中で始さんの存在がこの短い時間で言い表せない位大きくなったのも事実なんです!」

…正直嬉しいのと面食らってるのと半々で軽く混乱している俺、そんな俺を置き去りにしつつ葛葉先生は話し続ける

「私をはしたない女と思われても構いません!ですが私が始さんを本気で想っている事は分かって欲しいんです!」

本気…か、少なくともそれには応えないといけないよな…と、なると葛葉先生の前で変身せにゃならんのかな?

「葛葉先生」
「……」
「葛葉…先生?」
「……」

あー…確か…名前で呼んでくれって言ってたっけ?

「刀子さん?」
「はいっ!」

…清々しい位に反応が違うな

「まず見て貰いたいのがあるんですが…」

…と返事を聞かずに俺は刀子さんの目の前で「アデアット」と言わずに変身した

「正直な話、俺は「アデアット」や「アベアット」と言わなくてもこの通り自由に変身出来ますしエヴァの従者でもありません
 それに俺は自分が人間なのか化け物なのかも分かりません、小さい頃の記憶も無ければ生んでくれた両親もいませんから」

そのまま変身を解いて真っ直ぐに刀子さんを見つながら…

「それでも…俺がもし悪魔…化け物の類でも変わらずにいてくれますか?」
「はい…私の答えは…」

そのまま2人の距離が縮まって…お互いの唇が近づいて…

「―――ふぉぉっ!そこじゃあ〜っ!」

…小声ながらも特徴的な喋り方な声をハッキリと聞いた。それと同時に目の前にいる刀子さんの雰囲気が一瞬で変わった
ギラッって感じに目つきも変わってるし、目の方も白と黒の部分が逆転している……普通にマジ怖いんですけど

「そこっ!!!」

変身した俺でも殺されそうな雰囲気で小刀を声のした方向(ソファーの陰)に3本投げた…
…ってかそのソファー高かったんですがね、穴空いちまったなぁ…あぁ…

「学園長…そこでそんなカメラを持って何をしてらしたのですか?」

さっきも言ったけど普通にマジ怖い…キレてるんだろうな確実に

「ふぉっ?こんな爺に構わずに…ささっ早よう続きを」
「何をしていたと…聞いているんですよ私はぁ!!『斬空掌散』!!!」

ドドドドン!!!

「ひょ―――っ!!!」
「待ちなさ―――――いっ!!!!!」

刀子さんが怒りのスーパーモード状態で放った技をジジイが回避してそのまま逃走、それを追いかける刀子さん

「ああ…何だったんだろうなぁ…色々頑張ったと思うぜ俺…でもなんで頑張った結果が「部屋に大穴が開く」なんだろうなぁ…
 ジジイめ…次会ったら絶対ぶっ飛ばす……力の限りふっ飛ばす……!!」

そう、刀子さんが放った技が俺の部屋(壁の向こうは外)の壁に大きな穴を開けていた
見た感じ人一人は軽く通れそうだからジジイはここから逃げて、刀子さんはここから追っていったのか…はぁ

ドタドタドタ…

…ん?

「始先生!何があったんですか!?」

桜咲が『仕事』の時でも見みた事の無い程の必死の表情で部屋に飛び込んできた

「桜咲か…ちょいと来るのが遅かったなぁ…」
「ど、どこかお怪我でもされたのですか!?大丈夫ですか!?」
「いやぁ、俺よりも……そこ……穴開いちまったよ…ハハハ」

今何月だと思ってるんだ…絶対に寒いっての…それに雨、下手すりゃ雪入ってくるんじゃねぇか?

「へ?……あの…それは…なんと言いますか…」

まぁ普通は困るわな…部屋に大穴開けられりゃあなぁ…

「なぁ桜咲?」
「は、はい!?」
「日本の法律ではぬらりひょんを9/10殺しにしても罪には問われないよなぁ…?」
「9/10って殆ど死んでるじゃないですか!?ってぬらりひょんって学園長ですか!?学園長なんですか!?」

やっぱりソレで通じるか桜咲、でもあのジジイをぬらりひょんって表現しちまうと大妖怪の方のぬらりひょんに失礼に当たるかなぁ?

「いやもうジジイでいいや、諸悪の根源のジジイでいいや」
「ちょっ…どうしたんですか!?始先生!?気をしっかり持って下さい!」
「『気』かぁ、そうだな『気』で強化してフルボッコってのもいいなぁ…」
「…え?始先生も『気』を扱えるんですか…ってそうじゃなくて―――――っ!!」
「桜咲、お前も来い!2人で日頃の恨みを晴らそうじゃねぇか!!」
「落ち着いてくださぁ――――――――い!!!!!」



……

………





―――30分後 麻帆良学園女子中等部 グラウンド

「『滅殺斬空斬魔せ――――――――――――――――ん』!!!!!!!」
「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!!!!」




あとがき

クリスマスを鶏とケーキ食べて終らせたS’です(……家族だけだったら大抵こんなモンですよねぇ?)
今回は葛葉刀子暴走!…な話でした盗撮は普通に犯罪です、止めましょう
ネギま!の方に出てこなかった神鳴流の技がちょこっと出ましたが……別に問題無いですよね
さて21年も後4日(12/27現在)皆さんどのような正月を迎えられるかはわかりませんが来年が良い年であると良いですね
でわ ノシ

〈続く〉

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