―――午前7:11分 麻帆良学園女子中等部校舎→駅間の通学路

「時間潰せって言ってたけどさー…こんな朝早くなんざ何も無いっての」

ただ今午前7時過ぎ、辺りには朝練に行くと思われる学生がチラホラ…
そんな中をオレンジ色のバイク(サイドカー付き)で走ってたもんだから何気に目立つ
とりあえず今コンビニ『ツーソン』前にてパック牛乳を一気飲み中

「チャチャゼロも連れて来るべきだった…」

『別荘』の外だと動けないらしいけど話相手にはなっただろうなぁ…でも「人形と話すアブナイ人」に見られるのか

「あー…、コンビニで立ち読みしてっか?」

一度買い物したコンビニにほぼタイムラグが無い状態で立ち読みに入るってのはかなり気まずい
それに確か、放課後って言ってたよな…って事はだ

今=午前7時過ぎ 放課後=午後3時か4時位
16時−7時=9時間

つまり9時間も待たなきゃいけねえのか?まぁ、その前に茶々丸から連絡はくれるけどさぁ
無理だな、金だって大して持って無いし知り合いも居ない…エヴァん家帰るか、んでチャチャゼロとダベって…

――離せって!
――うるせぇ!!

…ん?そこの路地でケンカ?…じゃねぇな片方女の子声っぽいし

「まぁとにかく…だ、仲裁にしろ見物にしろこれで暇つぶしになるって事だな!!」

全速力で路地に突入!

「やだっ、やめろって!!」
「いいから来いってんだろが!!」

女の子×1人とチンピラ×3人確認!!

「どーん!」

女の子を掴もうとしていたチンピラAの後ろから右側頭部にハイキック一発、一人目K.O!!!

「な、何だ!?お前!?」
「何しやがんだ!?コラァ!?」

今のうちに女の子を俺の後ろに下がらせて残り二人を睨む…欲を言えばこの時に逃げて貰えると後々楽になるんだよなぁ

「あぁ?俺はなぁ、通りすがりの……タイヤキ屋さんよぉ!!」

当然嘘、素直に名乗る必要無いっての…ってかこのネタって分かる人いるかな?
嘘名乗りを上げた直後右にいたチンピラBの腹にケンカキック、左にいたチンピラCには右フックを顔面にそれぞれ一発ずつ
見舞ってやったら2人共のびちゃってケンカ終了。力入れすぎたか?それにしても手ごたえ無いなぁ…

「はい、おしまい。…君、怪我とか無い?大丈夫?」

んで、きっちり最後まで後ろで見ていた(逃げていて欲しかった)女の子に声をかけた

「は、はい大丈夫です…」
「ん、じゃあ早いこと学校に行きな。朝練か日直とかあるんじゃないの?」
「え…と、じゃあ、これで失礼します…どうもありがとうございました」

90度位まで頭下げて女の娘が走って路地から出て行く
あれってエヴァと茶々丸と同じ制服だったよなぁ…同級生なんかな?
ま〜いいか、とにかく俺もエヴァん家帰ろうっと………バイク押しながら(時間潰しの為)

コン

んあ?何か蹴った?足元を見ると「生徒手帳」なる物が落ちていた

「ベタだー…」

なんて呆れながら手帳のページを捲って名前を確認する

「えーっと…麻帆良学園女子中等部、2−A、長谷川千雨……か」

そういやエヴァと茶々丸の学年とクラスって何なんだろう?
放課後になったら聞いてみて、ついでにこの手帳も届けて貰うか…茶々丸に

「んじゃ、今度こそ帰りますかねぇ」

とりあえず(自己)完結したし、今度こそエヴァん家帰ってチャチャゼロとダベろう

…アイツ等はそのうち目が覚めるだろうよ………多分。






助かった…朝っぱらからヘンな奴等に絡まれるなんてどんなイベントなんだよ…
ったく、昨日からまったくと入っていいほど良い事がねーなぁ
キーボード壊れるわ、門限に遅れるわ、HPの更新は遅れるわ…
それにウチのクラスメートのエヴァンジェリンと絡繰そしてあの手から剣が生えたヤツ…アレだけは普通じゃない、普通な訳がない
コスプレしたエヴァンジェリンと絡繰が着ぐるみ着てたヤツとケンカしてたって言われても信じない
エヴァンゲリンの眼はマジだったし、絡繰は私を抱えて飛んでいた
剣生えてたヤツはどう見ても着ぐるみじゃない、あの姿形で生きている化け物だ
夢だと思いたい、忘れたいと言っている私がいる。けどアレは現実に起こった事だと、事実だと言っている自分もいる
正直…非日常、異常にも程がある

フルフル…

げ、ヤバい!昨日ほとんど満足にネット出来なかったしストレスも溜まってたし…

フルフル…

…今すぐ戻ってダッシュでキーボード買いに行って、ネットやろうか?でもさっきの男達いたらイヤだしな
クソ…どうすりゃいいんだよ



……

………

――――結局このまま私は学校に行ったが
震えは全く収まらず、また午後に高畑の授業が無かったので昼に早退した
昨日の事でエヴァンジェリンや絡繰から睨まれたり釘を刺す様な事は全く無かった
むしろエヴァンジェリンはSHRが終わってからずっと授業をサボっていた
…朝悩んでいたのがバカらしくなってきたが、油断はしない。油断したところを襲われるかもしれないから





―――放課後間際 麻帆良学園女子中等部内職員室

「ふぅ……」

今、昨日橋で捕まえた2人の件の報告書を書き終えて一息ついた
尋問(…と言っても記憶を覗いただけ)をした魔法先生の報告によると

『あの2人は関西呪術協会の一員で、麻帆良の各地に召喚した鬼を転送し
 混乱した所を侵入し木乃香君を探索、発見した後増援を要請して拉致するという作戦だったとの事
 しかし、バイクに乗った若い男に見られてしまった為召喚していた鬼に殺害させた所、若い男が急に魔物と思われる姿に変身
 動揺した2人が予め仕掛けてあった札で鬼及び魔物らしき物を麻帆良内に転送後、高畑・T・タカミチ教諭に捕縛される』

また関西呪術協会から…か、恐らくはこちら(関東魔法協会)を良く思わない派閥の下っ端って所だろうな
『大戦』からの遺恨がまだ向こうには根強く残っている、こんな事続けても何も変らないというのに…詠春さんも大変だな…
……そう言えば今朝のエヴァはだいぶ可笑しかったな
テーブルの上に乗って此花君の頬を引っ張って楽しそうだった、あんなエヴァは初めて見たよ
ナギさんと一緒にいたエヴァは何時もあんな風だったのかな?それとも…始君が最初?
何にせよ彼が『こちら側』に来てくれると言った時は不思議と不安を感じず、むしろ嬉しかったと言っていい
僕としては彼がこのままエヴァの友達になっていて欲しかったんだから

「おいタカミチ、何をニヤついている?」

―――っ!!!

「や、やぁエヴァ放課後はまだだけどもどうしたんだい?」
「フン、別に早くても構わんだろう?始にも既に茶々丸が連絡を付けてあるから直に来る」

エヴァがこういう事で時間より早く動くってのは珍しいなぁ…もしかすると

「始君の事が…」

ギロッ!!

…うっ別に睨む事無いじゃないかエヴァ、それにそんな事していると肯定している様な物だよ

「…僕の方はこの書類を作らなきゃならないから先に行っていてくれていいよ」
「…フン」

図星を差された為少し機嫌が悪くなった(照れ隠しだろうなぁ)エヴァが踵を返して職員室から出て行った
今のエヴァを見たらナギさんは何て言うんでしょうね?………師匠?





―――放課後 麻帆良学園女子中等部内学園長室前

「ったく、エヴァの奴…何が「先にジジイの所で待ってるから早く来い」だよ
 女子校で男一人歩くってのはメッチャ目立つんだっての」

あ〜…恥ず…放課後であまり人が居なかったんだけども何だか見せ物になった気分だよ

「まぁ、とにかく中入るか」

コンコン

「此花です、学園長」
「うむ、入ってよいぞ」
「失礼します」

今朝エヴァが蹴って開けたドアを普通に開けて入る
中には今朝のメンバーが揃っていた(黒人メガネ含むモブの方々は居ない)ってかエヴァなんで偉そうにソファーに座ってる?

「エヴァ、そこのドアの立付け悪くなってたぞ」
「フ、別に問題無いだろう…それに始、お前も今朝机を踏んで割っただろう?」
「…別に問題ないな」
「いや…問題有るからのぅ…」

学園長ツッコミ弱いよ…

「そんなことはどうでも良いジジイ、全員揃ったんだ早く話を始めろ」
「そんなことって…ワシの部屋なんじゃが…「あぁ?」…くすん」

学園長泣き入ってきてる…よく泣く人だなぁ

「…では此花君のこれからの事について話を始めるぞ」
「はい、学園長」

う…なんか緊張してきた…

「先ず、今朝始君が言った『こちら側』へ来るという意志は変っておらんか?」
「はい、変っていません」
「結構じゃ」

昼位にチャチャゼロにも聞かれたな…まぁ、チャチャゼロの方がエグい聞き方だったけど…
…それでも俺は決めた事を変えるつもりはまったく無い

「それでは此花君を明日付けで麻帆良学園の広域指導員及び女子寮の管理人として働いて貰うぞ」

……え?

「それでは仕事内容の説明「「ちょっっっと待ったぁぁぁぁ!!!」」…ほ?」

今朝言った俺の希望はガン無視!?…ってかサラっと爆弾発言したぞ!今!!

「何なんすか!?指導員と女子寮の管理人って!?ってか今朝俺『飲食関係』って希望言いましたよね!?その辺無視っすか!?」
「オイジジイ!!どう言う事だ!?タカミチと同じ仕事なのは良い、だが女子寮の管理人とは一体どういう了見だ!?」

俺とエヴァがそれぞれ学園長(…いやエヴァを倣って俺もジジイと呼ぶか?)に抗議する…因みに同時に喋ってた

「ほっほ、まぁ落ち着いて。話は最後まで聞かんといけんぞ」
「嘘付け、思いっきりこの部分に触れる気無かっただろう?」

俺もそう思った

「そうさなぁ、説明するとじゃ…まず始君の希望する『飲食関係』じゃが…残念ながら先方の方から断られてのぅ
 何分このご時世じゃ、何処も苦しくてのぅ」

…嘘くせぇ

「そこでワシの方で此花君に勧められる職を探し、見つけて、割り込ませたのが…」
「…職権乱用って言いません?ソレ?」
「いやいや、こういう時に権力は使うんじゃ」
「…いや開き直られても」

同意を求める意味で高畑さんに視線を向けてみたんだけども…すぐさま逸らしやがった

「…とは言え此花君の希望もあることじゃし、まず再来年の3月末くらい迄この2つで働いてみると言うのは?」
「何でその時期に?」
「異動の関係でな、あまりこの時期以外に人を動かしたくないんじゃよ
 もちろんソレまでには此花君の希望する『飲食関係』の勤め先は用意する」

………あぁ、これほど分かり易いと疑う気無くなるなぁ

「要するにお膝元に置いての監視、約1年の猶予を持って俺の処分を決める…って意味なんでしょう?」

…アレ?でも俺ってこんなに頭良かったっけ?今のだって何となく閃いたんだけど…理解不能だ





…ほっ、分かり易いとは言え中々鋭い。てっきり今のはエヴァが言ってくるもんだと思っておったがのぅ

「ほっほ、まぁそう深く考えんでも良いじゃろうて…で女子寮の管理人の方なんじゃがなぁ」

コレは本当に良いタイミングじゃったのぅ

「現管理人の女性がおったんじゃが、先月急に入院してしまってのぅ
 入院、リハビリを考えると1年は欲しいのじゃ。そしてその間代理として此花君にお願いしたい」
「いや、それかなり今作ったっぽいんですけど…」
「本当なんだよ此花君「いいっ!?マジですか?」…うん」
「茶々丸」
「はい、マスター………検索完了
 9月21日午後2時32分女子寮内管理人室内にて60代の女性がギックリ腰を起こしそのまま病院に搬送され当日中に入院
 …となっております」
「マジかよ…」

…ワシって信用無いの?

「日頃の行いだろう」

心を読むでない、エヴァ!

「でも男が女子寮の管理人なんて女の子側が納得するわけがないじゃないですか
 不審者扱いされて拳とか鈍器とか喰らいそうなんですけど…」
「なになに、それは此花君がしっかりと節度を持って接すれば良いことじゃ…それともナニしてしまうつもりなんかの?」
「……高畑さん、この人本当に教職者なんですか?」
「いやぁ、一応そうなんだけど…」

こりゃタカミチ君!ここはキッパリと断言する所じゃぞ!!それにエヴァと茶々丸君、なんじゃその視線は…

「…はぁ、もういい始このままやってても埒があかん覚悟を決めろ
 それにこのジジイの事だ、この話を断れば裏で手を回して何処のどんな職種でも
 就職することは出来ずに結局は此処に来る羽目になるだろうからな」

ほっほ、やはりエヴァはそこまで気付いておったか

「そういう事だったら…この話って脅迫って事にならない?」
「ま、近いものだろう…」
「高畑さん!!この人本っっっっっ当に教職者なんですか!?」
「僕も疑いたくなってくるよ…」

……ワシ悪者?

「悪者」
「だな」
「肯定します」
「僕には庇いきれません…」

ひょっ!?

「…兎に角、詳しい仕事の内容は明日の朝に此処で説明するので、7時前に此処に来て貰いたい」
「選択肢無いんじゃ何言っても意味無いのか…はぁ」
「始、今日はこれで幕引きだ…………近いうちに礼はしないといけんがな」
「あぁ」
「その時はお手伝い致します」

うむ、何とか上手くいったようじゃな
暫くは魔法障壁の強さを強めておかねばならんくなったが…

「ところで学園長?」
「なんじゃ?此花君?」
「俺を女子寮の管理人にしたのってそれだけなんですか?」
「ほっほっほ、まぁ面白そうだったのも……」

………あ





…へぇ、そういう事かい?面白半分ってヤツってか!?

「…始」

…なんだよ?エヴァ?これは止めるなよ、止めたらお前もヤルぞ!

「丁度いい機会だ、ジジイにお前の力を見せてやれ」
「おう」
「ひょっ!?な、なにするんじゃ!?」

安心しろ学園長…いやジジイ!仮にも雇い主を天に召すような真似はしない!!地獄には叩き落すがなぁ!!!

「ひょおぉぉぉぉぉぉ!!!???」

目の前で変身した俺を見て驚いたのか目を丸くしてジジイがうろたえている

「…安心しろ中級で勘弁してやる」
「中級?安心って何じゃあぁぁぁぁぁぁ!!!???」
「『フブーラ』!!」

ジジイの周りから一瞬で『フブ』を使った時より大きい氷の柱が現れて、逃げる間も無くジジイを包む
そのままジジイは氷の置物と化し何も喋らなくなった

「ちったぁその中で頭を冷やしな」

変身を解除しながら俺達(高畑さん含む)は学園長室から出て行き、その後『超包子』という屋台で4人で夕食を取った
高畑さんから「僕の事はタカミチで良いよ」という言葉を皮切りに一気に2人の友情を深めていった
具体的にはジジイのグチを言い合ったり(3:1でタカミチさんが多い)
タカミチさんの仕事の事(ジジイへのグチ含む)を聞いたり、明日からの仕事のアドバイスをしてもらったりしていた
…当然エヴァをいぢったり、からかったりするのは忘れないが、途中「ふざけるな――――!!!」とエヴァ火山が噴火した為
俺の膝の上であやす…すると機嫌が良くなったのかタカミチさんとジジイへのグチを言い合っていた
しかし、ここの料理はハンパ無く美味い…これは俺よりも確実に上だろうなぁ、今度色々と教えて貰いたい





………ってか此処に就職、いやバイトでも良いから入りたい




あとがき

大体のSSでのテンプレを余すことなく盛り込んだ話でした
シルバーウィークは皆さんどう過ごされますか?俺は今月の頭に大尉に降格してしまった「戦場の絆」を少佐に戻すため
戦いに行ってまいります……たとえスナイパーを連続で使ってでも戻す覚悟で!!

〈続く〉

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