茶髪の眼鏡を掛けた少女side

―――桜通り 並木道 夜



……

………

…はぁ。

私、長谷川千雨は今非常にイラついている。「誰」に対してではなく「自分」に。
細かく言えば自分の不甲斐なさに…だ。

始まりは今朝のこと…
徹夜で仕上げた新作のコスにコーヒーをこぼしてしまい
それが元でHPの更新に穴を開けてしまった
ムカついて机を叩いたつもりがキーボードを叩いてしまい、壊れた
近場の電気店で新しいキーボードを買おうとすると休みだったりする…

そんなこんなで片道1時間かけてようやく買ったキーボードを片手に
寮の門限ギリギリの中私は今桜通りを走っている

「はぁ…はぁ…こんなんじゃ間に合わねーな…」
 
別に門限なんて関係無いが、目立つ事だけはしたくなかった
『表の世界では目立たず騒がず危険を冒さず、リスクの少ない裏の世界でトップを取る!』
それが私のスタンスだからだ。

「しゃ〜ねぇ、確かこっちが近道だったハズ…」

そう思い私は植木を越えて脇道に入って行った、それが今日最大の失敗だと知らずに…




「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」

「ダメだ……もぅ……走れね〜…………」

「あ〜…、親戚が事故ったとでも言ってみるかな」

なんて門限破りの言い訳を考えながら歩いていると人の声が聞こえてきた

……楯ッ………

…バンッ……!

サギタ………リス!

「あぁ?なんだ?こんな所でケンカしてんのかよ…勘弁してくれって…」

ドン!!!!!

「ガアアァァァァッッッ!!!」

「うひゃあっ!?」

なんだ!?コイツは!?
声のした方から音がしたと思ったら私の目の前に人が飛んできやがった!?
…人?違う!?
体が青白くて、変な模様入ってて、牙むき出しで、腕が半分に割れてそこから剣(?)が生えてる
人間なんて何処にもいねぇ!
ゆ、夢か?コレ!?
夢だったらせめてコスにコーヒーこぼす前…いや出掛ける前でいい!!!
夢であってくれぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

「長谷川さん、失礼します。」

そう聞こえると同時に私の体は後ろに飛んだ、いや担がれてる!?

「トドメだ!!喰らえ!!」

ドドドドドドドドドドドッ!!!!!

「ガアアアァァァァァッッッ…」

もうワケわかんねー…
子ビン(?)が割れたと同時に矢(?)みたいな形になって
仰向けになってる人(?)目掛けて降っていきやがった。
叫び声が聞こえなくなったらぐったりしてるし………し、死んだのかアイツ?

静かになって少し落ち着いた私は
私を担いでいるヤツと奥にいるヤツを見てまた混乱した

何故なら2人ともウチのクラスメートだからだ…

私を担いでいるヤツが「絡繰 茶々丸」
耳のアンテナといい、足から出てるジェットといい
絶対コイツロボットだ…

奥にいるヤツが「エヴァンゲリン・A・K・マクダウェル」
制服姿しか見てないからなのかわかんねぇけど
コイツの私服(?)凄い趣味だと思う
黒いマント羽織ってかなり際どい黒色のボンテージって…
私が言うのも何だがコスプレも程々にしねーと…

なんて考えてたらもう地面に降ろされていてあのロボがさっきの人(?)を担いでいる

「おい、長谷川千雨…」

教室で一度も見せた事の無い表情に私は背筋に冷たい物を感じた…

「な、なんだよ…」
「私達はこれで消えるが…今あった事は誰にも言うな…」
「…。(ゴクッ)」
「もし誰かに喋ってみろ…貴様の血1滴残らず吸い尽くしてやる」
「なぁっ…」

声なんて出なかった、何なんだアイツの眼…
鋭くて冷たくて…何より怖い

「行くぞ、茶々丸」
「はい、マスター。長谷川さん、また明日学園でお会いしましょう。」

2人の姿が見えなくなったと分かった途端
私はその場に座っていた…
あまりにも急展開過ぎて頭が追いつかないのと、恐怖から開放されたことで
私の腰が抜けてしまったのだ

「もう何なんだよ…」

だが答えは返って来ない、ほんの数分前ほんの数分戦場だった場所には
もう私しかいないのだから……










「……って、オイ!私を置いていくな!!
 
 しかも買ったばかりのキーボード壊れてるじゃねーかよ!!!チクショー!!!!!」

〈続く〉

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